盗む門には物怪来たる〜モンスターの見つけ方:Day2オープニングゲストトーク1曼名伽組・小島組長【82感門】

2023/10/01(日)08:00
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感門之盟が行われたその日、本楼のある豪徳寺では世田谷八幡宮例大祭が行われていた。八幡神を祭神とする神社は全国に約44,000社。大分県宇佐市の宇佐神宮が総本社、他は擬(もどき)であるが、そんなことはお構いなしにどの八幡神社も大盛り上がりだ。

 

豪徳寺駅近くで出番待ちをする山車。

 

編集学校も本楼だけではない。ネット上の教室を「本楼擬」だと捉えれば、日本中のみならず世界のアチコチが本楼擬だらけだ。われわれはまさにヴァージョン≒擬を制作することによって世界を制作しているのである。教室が閉じた後も、同じ地域縁(ゆかり)の仲間と出会える支所もある。卒門・突破したら終わり、ではないのだ。

 

現在、編集学校には東北、中部、京都、九州の4カ所に支所があり、自律的、自発的に校長松岡正剛の方法を擬き倒している。感門之盟2日目のオープニングには、その中から中部と九州の組長がお祝いに駆けつけた。

 

 

■Mr.擬

中部(名古屋)支所・曼名伽組(まんなかぐみ)からは、2代目組長小島伸吾と貴ボーこと小島貴子が登壇。小島は自らを「アーティスト擬」で「珈琲店オーナーは仮の姿」だと語る。貴ボーは13[守]全禅おしゃま教室師範代。2人はイシス婚を果たした夫婦だ。司会の八田によると小島が毎年校長の誕生日にアーティスト擬として作品を送るので、イシス館は小島作品の博物館擬になっている。今回はその中から今年の誕生日の作品をお披露目した。

 

のれんをお披露目しながら突破者・放伝者を寿ぐ3人。左から八田律師、小島、貴ボー。

 

自らが校長松岡正剛の擬であることを誇らしげに示す小島。

 

◾️Mr.ダブルページ 

表裏に校長の様々な言葉と写真が散りばめられた「のれん」がお目見えした。中央の「わたしは本である」の赤文字が目を引く。「これは連塾のラストで校長が掲げた言葉で、メインに入れたかった」と小島は言う。校長はかつて「自分のことをMr.ダブルページと呼んでくれと言っていた。校長っぽさが出ている」と司会の八田が応じる。

 

表面の全貌。中央の赤い文字・背景・花押が目を引く。

 

◾️盗めって言われたので

他の言葉も校長が本などに書いたもの、写真は倶楽部撮家・後藤由加里のものを無許可で借りたものだ。「無許可の曼名伽組なんで。盗めって言われたので」と茶目っ気たっぷりに語る小島に、八田は「借りものOKというところが編集学校っぽい」と小島の方法を言い換えた。

 

◾️行き詰まったら

作品作りのルールについて、小島は「作品作り=編集的実践だと決めて、校長の3M(メディア、メソッド、メッセージ)をモノにどう置き換えるかを2人で捻り出す」と構えを語る。だが、5、6個考えたあたりで必ず行き詰まるという。そんな時の必殺兵器を貴ボーがショルダーバッグから取り出した。

 

会場から「あぁ〜」という声と共に拍手が湧き起こる。校長松岡正剛著『見立て日本』(角川ソフィア文庫)である。「この本の方法は、物づくり・事づくり・場作り、全部に当て嵌められる。120のコンセプト単体使いのみならず、2つ以上の技のかさねあわせもできるため、無限にバリエーションが広がる。こののれんは“のれん”+“言葉と写真の吹寄せ”の一種合成で作った」と明かした。

 

自慢気に必殺兵器を取り出す貴ボー。

 

 

落葉や紅葉に見立てられ、吹き寄せられた校長の言の葉。のれんの上で心地よさそうにゆらめいている。

 

◾️巫女だったかぁ。

のれんに掛けて「曼名伽組はのれんわけしてもらえないので」と笑いを誘った小島に、校長は「いいよ」と告げ、会場が一気に盛り上がる。校長からコメントを求められた貴ボーは、ハラハラする小島を横目でみながら「いないいないばぁ」と応じてみせた。この鮮やかな返しに小島は「巫女だったかぁ」と呟く。校長も佐々木局長も大喜びである。実は『見立て日本』は79感門で佐々木が小島に送った本だった。

 

たくさんの付箋がついた『見立て日本』。

 

のれんわけを喜ぶ小島夫妻を嬉しそうに見つめる校長と局長。

 

◾️もののけ≒虚≒モンスター

最後にデ・モンストレーションの秘訣に話は及ぶ。小島は『見立て日本』の最後に記された「虚に居て実を行ふべし」がずっと刺さっていると語る。実践をいつもの自分(実)でするのではなく、敢えて虚で何かを始めて、実践に向かうことが重要なのだと明かす。今後は3M+モンスター+松岡の5Mにプラスして、のれんわけのパワーもいただいて取り組む、と宣言。物の奥に潜む物怪(もののけ)≒虚≒モンスターを引き摺り出す大きなヒントが、参加者に手渡された。

 

 

曼名伽組と共に珈琲を飲みたい人、校長を擬いて見たい人はいざ、こちらへ。

ヴァンキコーヒーウェブサイト

 

 

2組目のゲストトークはこちら。

 ▼

祇園の技法〜モンスターの育て方:Day2オープニングゲストトーク2九天玄氣組・中野組長【82感門】

  • 清水幸江

    編集的先達:山田孝之。カラオケとおつまみと着物の三位一体はおまかせよ♪と公言。スナックのママのような得意手を誇るインテリアコーディネーターであり、仕舞い方編集者。ぽわ~っとした見た目ながら、ずばずばと切り込む鋭い物言いも魅力。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。