この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

ゴールデンウイークがあけ、立夏を迎えた5月8日、編集学校の入門コース[守]が開講した。
鯉が滝を登って竜になる「登竜門」伝説に見立てた[守]アイコンに相応しく、19ある教室のあちらこちらで学衆の声が響き渡る。
エンジンスロットル全開で、ななめ45度の展開を期待します。
編集という行為を通して、新しい世界認識を手に入れられることに期待しています。
どのような化学反応が起こるのか全く未知数ですが、楽しんで参加していきたいと思います。
遊び方を学ぶ、皆様と交流し思考を深める、の二つを目標にイシスで生きていきたいと思います。
51[守]の師範代は編集稽古の「地図帳」を自作で用意している。編集稽古に使われるお題のすべてをマッピングし図解したものだ。
講座には38の共通のお題が用意されているが、師範代が用意した「地図帳」はひとつとして同じものはない。それぞれの教室を【地】にした編集稽古の新しい意味づけだ。
編集の型【地と図】
「地」(ground)は情報の地模様
「図」(figure)は情報の図柄
情報(=図)をどのような背景や場面や文脈(=地)に置くかで、その情報の意味や見え方を大きく変えることができる。
編集術は情報の見方を自由にする。言葉もしぐさも歴史も記憶も、あらゆるものを「情報」としてとらえる。師範代はお題をも「情報」としてとらえ、[守]の稽古の道のりを示す「地図帳」をつくりあげた。
ダブル・ヴィジョン教室の重廣竜之師範代は、一本の大樹をキャンバスにして、稽古の節目や関係するお題のネットワークを表現した。いくつかの枝に施した「擦れ」の効果は、“one”と“another”の二重のヴィジョンを思わせる。
分人庭師教室の鈴木哲也師範代は、お題を情報の「アケ/フセ」で分類しV字に配置して左右に対比させた。庭師の剪定鋏を思わせるV字の形は、情報を取り込む大きな器のようでもある。
師範代は教室を【地】にして、これから展開する稽古模様を仮の【図】として描いた。
この大筋のストーリーを携え、師範代は学衆とともに編集稽古の旅をくりひろげる。最短距離を行くナビゲーションなどいらない。編集はまわり道だって歓迎だ。
学衆たちはそれぞれの教室で天を仰ぐ鯉のごとく、いきいきと情報の滝を登り始めた。教室ごとに用意された「地図帳」に稽古の足跡が刻まれる。
編集稽古によって教室の【地】も【図】も更新されていく。51[守]の15週間の旅は始まったばかりだ。
アイキャッチデザイン:阿久津健
阿部幸織
編集的先達:細馬宏通。会社ではちゃんとしすぎと評される労働組合のリーダー。ネットワークを活かし組織のためのエディットツアー も師範として初開催。一方、小学校のころから漫画執筆に没頭し、今でもコマのカケアミを眺めたり、感門のメッセージでは鈴を鳴らしてみたり、不思議な一面もある。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。