この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

本を読むのは部屋の中だけではない。著者が生きた土地、物語に書かれている舞台を巡ることで、さらに立体的に、匂いも風も景色も持って、読書体験は拡がっていく。
コロナ禍の閉塞感から解放され、駅や空港に人があふれる2023年の大型連休が始まった。水際対策も緩和された昭和の日の翌日、日本の古典や哲学をテーマにした読書講座・輪読座の第1回(全6回)が開催された。今期(2023年4月から9月/月1回)の輪読座で取り上げるのは、幕末に生まれ、明治、大正、昭和を生きた幸田露伴である。
露伴と同年に生まれ、生涯にわたって交流のあった尾崎紅葉は1910年に亡くなっているが、露伴は明治維新とともに少年期を過ごし、第二次世界大戦後1947年に没した。大日本帝国の形成から滅亡まで、日本が大きく揺れ動いた時代を目の当たりにした人物と言えよう。
江戸下谷三枚橋横町に生まれ、浅草諏訪町、神田末広町で少年期を過ごした露伴。千夜千冊983夜でも触れられている『五重塔』(第2回に輪読予定)は、台東区谷中にあった寺の五重塔再建をモデルとしており、その跡は谷中霊園の中にある。小説の舞台としてもなじみ深い下谷から浅草、谷中、鶯谷までを輪読師・バジラ高橋とともに歩くツアー・輪読クエストが、第2回の輪読座の1週間前、5月21日(日)に開催される。谷中霊園をはじめ、浅倉彫塑館など観光名所も盛りだくさんな地域であるが、幸田露伴というフィルターを通して歩くことで、新たな発見があるに違いない。
ツアー参加資格は輪読衆であること。
輪読座はイシス編集学校講座未受講者でも受講でき、途中参加も可能。記録映像は輪読座期間中はいつでも視聴できる。受講を迷っていた方も、久しぶりのリアルツアーとなる輪読クエスト・ブラバジラを受講のきっかけにしてはいかがだろう。今期の輪読座はサテライト講座のみなので、対面でバジラ高橋の語りを聞ける貴重な機会でもある。露伴も歩いた地形を足で捉え、変わらぬ景色・変わった景色を目で眺め、露伴の想いと面影を心で追いかければ、2回目以降の輪読座では露伴の世界を五感で味わい尽くせること間違いなし。
18歳で逓信省十等技手として余市に赴任し、アイヌの人たちと交流を持ったことから、干渉圧政を嫌い、国を守っても外国を攻めないという非戦論を貫いた露伴。ロシアによるウクライナ侵攻や止むことのない紛争に、世界が、そして日本が翻弄されている今こそ、露伴の哲学が必要だ。
まだ遅くはない。
第2回以降、「さらにとんでもなくなる」と宣言された輪読座「幸田露伴を読む」に参加し、ブラバジラも楽しんでいただきたい。
輪読クエスト《幸田露伴ゆかりの地を巡るツアー》
※内容は変更となる可能性があります。
・開催日時:2023年5月21日(日)
・集合場所:南千住駅
・申込方法等は後日案内
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日本哲学シリーズ 輪読座「幸田露伴を読む」
日時:全日程 13:00〜18:00
2023年4月30日(日)(終了・録画視聴)
2023年5月28日(日)
2023年6月25日(日)
2023年7月30日(日)
2023年8月27日(日)
2023年9月24日(日)
受講資格:どなたでもお申込いただけます(イシス編集学校講座未受講の方もご参加可能です)
参加方法:オンライン(Zoom)
※記録映像を期間中いつでもご視聴いただけます。
価格:サテライト講座:6回分 33,000円(税込)
詳細・申込:こちらをご覧ください(イシス編集学校のウェブサイトへリンクします)
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米田奈穂
編集的先達:穂村弘。滋賀県長浜出身で、伝統芸能を愛する大学図書館司書。教室名の「あやつり近江」は文楽と郷土からとられた。ワークショップの構成力に持ち前の論理構築力を発揮する。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。