回転する宇宙から話がはじまる「册影帖 全宇宙誌」撮影現場10shot

2023/04/23(日)12:28
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 撮影が始まったのは数ヶ月も前のこと。「次の册影帖は『全宇宙誌』でいく」と耳にして、撮影スタジオとなった本楼に伺ったのは昨年の秋だった。

 册影帖とは写真家 川本聖哉さんが松岡正剛の編著作を映像化するプロジェクト。これまでに『フラジャイル』『雑品屋セイゴオ』がセイゴオちゃんねるで公開されてきた。

 『全宇宙誌』(1979年/工作舎)は、7年もの年月をかけて制作された本で、今やなかなか手にする事のできない貴重本である。アートディレクション杉浦康平、編集・構成 松岡正剛他。想像がつくだろうか?細部に至るまで丁寧な仕事が施されたあの漆黒の本をどうやって映像として翻訳をするのか。

 『全宇宙誌』の映像化に挑んだ川本聖哉さんの撮影現場の一部を10shotでお届けする。

 

册影帖第三弾『全宇宙誌』

本編はセイゴオちゃんねるで公開中。視聴はこちらから。

 

 

◆本楼に小さな宇宙出現

自然光の差す本楼入り口「井寸房(sensunbo)」に並べられたのは、丸く切り取られた本のページ。太陽光で動く小さなターンテーブルが土台のため、刻々と変わっていく陽の光に合わせて、少しずつ位置を移動していく。

 

ターンテーブルは高さを違えて配置されている。光が差し込む限り健気に回り続けるページたち。回転速度がそれぞれ異なり、見ているうちに目が離せなくなる。

 

ファインダーを覗き『全宇宙誌』に集中する川本さん。撮影した動画をどう編集し、作品にしていくのか。最終イメージは川本さんの頭の中にだけある。

 

エンディング音楽のピアノ演奏を担当した上杉公志(写真手前)。小口のフラムスチード天球図とアンドロメダ星雲を綺麗に見せるため、本をしならせるという大役も果たしていた。

 

◆この本はめんどくさい相手

「この本は解体するにはめんどくさい相手なんです。『全宇宙誌』を相手に負けないで遊んでほしい」

最初のテスト動画を視聴し、当時の杉浦康平さんとの制作エピソードを交えながら、川本さんに感想を伝えていく松岡。

 

◆球体の秘密

川本さん特製の”全宇宙誌ミラーボール”には、松岡手書きの方程式がどこかに印字されている。ミラーボールは期間限定で本楼の一角に飾られている。本楼を訪れた方は、その実物をぜひ探し出して欲しい(ラッキーだったら見られるかも)。

 

タイプディレクションを担ったデザイナー穂積晴明(写真上・右側)とミラーボールを完成させ、真っ暗の本楼に球体となった『全宇宙誌』が浮かび上がる。

 

◆最後に命を吹き込む

最初の撮影から数ヶ月を経て、仕上がった動画作品を視聴する。あとは松岡の朗読を録音するだけ。完成は間近である。

 

何度かのテイクを重ねて録音も無事に終了。どのフレーズが、どのように朗読されたのかは、本編で存分に堪能いただきたい。

 

册影帖第三弾『全宇宙誌』

本編はセイゴオちゃんねるで公開中。視聴はこちらから。

 

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  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。