この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

師範の新井和奈は見逃さなかった。
教室では[守]のお題036番:バナナと魯山人が出題された。これは2つの文章を融合し、大胆な着替えを起こそうというお題だ。モモめぐむ教室の学衆・Tの回答冒頭には、こう書かれていた。
いよいよ最終場面、稽古もますますエスカレートしている中、着せ替えてお着替えの練習が始まっていますね。これはドレスコードを備えて、ラストパーティへの足を調達し始めなければいけないところかな。
お題はあと3題。言葉の着替えから、文章の着替えに稽古が移った。今まで学んだ編集の型を携え、残りのお題に取り組もうという、卒門への構えを見立てたマクラだった。そこに師範・新井は来たる感門之盟との関係線を引いた。
感門之盟のドレスコード どうする?
@モモめぐむ教室
勧学会での発言の最後に添えられたこのコメントに、学衆Yが反応を示した。今回の感門之盟には学衆が本楼に戻ってくる。本楼出席を決めていたYは、どのような服装でいこうか悩んでいた。そこに師範代の中村裕美は過去の感門之盟の様子を伝えた。教室名らしさを取り入れた服装、学衆に衣装編集してもらった師範代。過去の話にインスピレーションを受けたYは、モモめぐむらしさとは、連想を膨らませる。
中村は、モモめぐむ教室の世界を、ミヒャエル・エンデの『モモ』の世界と重ねていることを明かしていた。エンデが描くモモは、ロックな生き様。しかし寿ぎの場であれば、ドレッシーな方がいいか。ツギハギの服を着るモモならば、古着だろうか。勧学会に様々なパターンの衣装案を提示すると、教室仲間に呼びかけ、アイデアを求めた。「師範代をいじろう」。ドレスコード談議が一気に加速した。
「イメージカラーは『モモ』の表紙にちなんでオレンジだろう。時計がキーアイテムだ」
「モチーフなら花、星、亀もある」
「モモはどのような恰好をしていたっけ?」
「『モモ』を読まなきゃ」
本楼参加者だけではなく、感門之盟欠席者も加わり交し合うドレスコード談議。最終的にそれぞれがどのような服装にするか、フセられたまま終わった。そして3月18日、感門之盟一日目。モモめぐむ教室の仲間が集った。
各々が教室名に肖って描き出した、たくさんの『モモ』の姿。17週間の稽古で培われた、イキイキとした編集の実りをご覧あれ。
師範代・中村。背伸びしておしゃれしたモモ。ゆるふわパーマ。だぶだぶジャケット&くるぶしまでのスカート。花のコサージュ。オレンジのネイル。学衆のアイデアを一種合成する。
師範・新井。ロックなモモ。チームの傑作ペパーランド教室とのコラボ。ペパーランドパーカーに桃の髪飾り。前髪はこの日の為に、オレンジに染める。
学衆Y。鮮やかなオレンジのワンピースに大きめのジャケットを合わせる。裸足のモモにちなんでサンダル。靴下も教室カラーのオレンジ。
学衆Aとその母。Aのカラフルなユニコーン柄のワンピースは、灰色の男たちから色とりどりな時間を取り戻すイメージと重ねる。Aを編集学校へ導いた母は、星空を纏い、星を眺めるモモを彷彿とさせる。
学衆T。ズバリ灰色の男。ジャケット、ネクタイ、帽子。ハレの日にふさわしく、びしっとかっこよく灰色でキメる。
Zoom参加メンバーも負けていない。学衆Tは愛娘の桃百(もも)ちゃんと共に。これ以上のモモはない。学衆Iは偶然その日にもらったガーベラを背景に、教室カラーのオレンジで華やかさを添える。
(文)中村裕美
(写真)チームさかい洋果子転
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イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
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2025-06-10
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2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。