多様さとフラジリティ : 原田淳子[破]学匠メッセージ【81感門】

2023/03/19(日)18:21
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原田学匠メッセージ

アフターコロナの明るい兆しも感じさせる、雲ひとつない青空がひろがった2023年春の感門之盟 Day2。49破の突破式に先立ち、春も一緒に連れてきたような桃色の着物で登壇した原田淳子[破]学匠は、コロナ禍から社会が日常へと戻りつつあった世界で、さまざまな事情を抱えながら破の稽古を進め、指南を届けてきた、学衆と指導陣に向けてメッセージを贈った。

 

■編集学校のユニークネス
編集学校の師範代は、年齢も経験も職業もさまざまだ。編集学校のユニークさを支えるのは師範代の「多様さ」である。入門してから1年半で、学衆から師範代へとロールを着替えられる仕組みによって、他者と世界と自分が一緒になったまま、フラジャイルな状態で師範代になる。ときに危なっかしさも感じるそのゆらぎがあるからこそ、学衆と師範代の間には相互編集が起こり、常に変化が生まれ、場をいきいきとさせていく。

 

■世界とのつながりを取り戻す
指南を受けてホクホクしたり、グサッときたり。教室の仲間の声が聞こえなくなると、どうしたのだろうと思ったり。学衆としての自分の中に、いろんな他者が流れ込んできて、半分くらい師範代になったようなときもあっただろう。短い期間に、さまざまな稽古や交し合いをすることで、自分と他者、自分と世界のつながりを持ち続けられる。編集学校では、実はそれを狙っているのだ。

 

■フラジリティとエディトリアリティ
既存のルールを身に着けるたび、世界と自分が分かれていなかった頃に持っていた幼ごころを忘れてしまう。フラジリティを持ちながら、エディトリアリティに変えていく。それが編集学校である。そんなユニークな学校である編集学校が、ずっと世界にあり続けて欲しい。

 

「このさきも編集学校が在り続けていく道は、みなさんが編集を続けていくこと。編集の道を共に続けていきましょう。」


今期、神出鬼没に教室に現れ、こちらとあちらを結んできた[破]学匠・原田淳子は、願いを込め、次のステージへと優しく背を押した。

  • 米田奈穂

    編集的先達:穂村弘。滋賀県長浜出身で、伝統芸能を愛する大学図書館司書。教室名の「あやつり近江」は文楽と郷土からとられた。ワークショップの構成力に持ち前の論理構築力を発揮する。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。