速度から相互へ:師範代の応接【81感門】

2023/03/18(土)22:30
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速さが大事。

 

 止観エンドース教室師範代・遠藤健史は医者だ。目の前の患者の状態をいち早く察知して、判断を下さなければならない。サッカーコーチで子育てパパとポリロールをこなすにも、スピードが必要。自身が学衆の時も、超スピード回答を連発させ、師範代と学衆を驚かせていた。

 

 遠藤が師範代になって苦悩したのは、待てど暮らせど学衆の声が聴こえないときだ。

 

 「正直、電話したかった」

 

 感門表授与のあと、2階の学林堂で、自身の師範代である筆者につぶやいた。感門表授与の挨拶でも、LINEですぐにスタンプが返ってくることに慣れすぎて、教室のやりとりの速度が自分の想定以上に幅があることに驚いた、と語る。煽りたいわけじゃない。ふわっとやりたいんだけど、締め切りもある。

 

 遠藤は学衆の投稿が途絶えるたびに「なぜ遅いのか?」「どうしていきなり連打されるのか?」を考え、同じ球を投げても返ってくるスピードに多様性があることに気がついた。性格、気分、仕事の都合、体調、お題の得手不得手などで、毎回違う。ならば、相手の背景を読み解いて、インタラクティブに指南を返すスピードを動かしていけばいい、と気づいたのだ。あえてゆっくり指南を返すことで、焦らなくていいと伝えることもできれば、瞬時に応じてチャレンジを讃えることもできる。スピードボールを回し続けるのではなく、教室をサッカーに見立て、場や人、状況に応じて緩急をつけるパス回しがはじまった。

 

 その成果は、学衆を見ればわかる。卒門を決めた学衆が、次々に[破]へ進むことを宣言している。何事にも速さが求められがちな社会において、遠藤のインタラクティブな応接の方法は、大きな価値になるに違いない。

 

 

  • 清水幸江

    編集的先達:山田孝之。カラオケとおつまみと着物の三位一体はおまかせよ♪と公言。スナックのママのような得意手を誇るインテリアコーディネーターであり、仕舞い方編集者。ぽわ~っとした見た目ながら、ずばずばと切り込む鋭い物言いも魅力。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。