突破のあとの「たくさんのわたし」

2023/03/02(木)08:16
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 焚き火、星空、ランタンの灯。

 山小屋仕立ての「ヒュッテ・ブリコ」に、突破を果たした六人の学衆が集った。ちちろ夕然教室(福井千裕師範代)と縞状アンサンブル教室(田中香師範代)を有するチーム・ブリコの合同汁講である。バーチャルヒュッテ、山小屋のしつらえは、福井師範代のオハコ。パチパチと薪の爆ぜる音が響く。思い思いの飲み物を片手に、Zoom画面に映し出された焚き火の炎を見つめながら、来し方行く末を語り合う。

 

 「文章が書けるようになった」「言葉の選び方が変わった」「歴史や読書に興味を持つようになった」「これまでとは選ぶ本が変わった」「時間編集ができるようになった」「3千字の物語が、自分に書けるなんて驚き」「文章が磨かれたと感じる」など口々に破で起きた変化を言葉にする。

 最初は無理だと思ったけれど、突破できてよかった。ある学衆は進破を躊躇っていた時、守の仲間から言われた「無理って言ってたらいつまで経っても無理だよ」のひとことが、前に進む後押しになったと振り返る。

 「指南を読むのが楽しみでした」「指南をもらって初めて『自分はこんなことを考えていたんだ』と気づくことがありました」師範代にとっては贈り物のような言葉も飛び出した。

 

 仕事が、プライベートが、年齢が、と先に進むことを躊躇う理由はたくさんある。しかし迷うということは、やりたい気持ちがあるということ。自分の数奇を大切に好奇心をエンジンに、進め編集のその先へ!

さまざまな想いをのせて、ヒュッテ・ブリコの夜は更けゆく。

  • 戸田由香

    編集的先達:バルザック。ビジネス編集ワークからイシスに入門するも、物語講座ではSMを題材に描き、官能派で自称・ヘンタイストの本領を発揮。中学時はバンカラに憧れ、下駄で通学したという精神のアンドロギュノス。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。