「Return to 守」で乱世に春を呼べ―50[守]

2023/01/01(日)21:00
img POSTedit

 50期[守]別院のミメロギア神社への参拝客が後を絶たない。「編集の力を携えて新たな春を迎えたい」と願い、納められるおみくじの束が清々しい。1月1日時点で23本も集まった。

 

 では、次の数字は何をあらわしているだろうか。

 5、13、15、16、17、24、29

 7、17、19、19、19、27、34

 

 今期の[守]では、一度目の受講ではない学衆が複数名受講している。師範代や師範経験者も含まれる。冒頭の数字、1列目は最初の守を受講した期、2列目はその面々が初めて師範代登板した期を示したものである。卒門後、間髪置かずに無我夢中で師範代まで駆け抜けたことが暗示される。年の瀬のある夜、学匠の鈴木康代の呼びかけに「Return to 守」を果たした7名が集った。

 

「編集力チェックでもらった指南がすごかった。何が起きているのか、
 興味が湧いた」        (とれもろドローン教室 新井浩)
「更新されたお題を体験してみたい」

                (ダルマ・バムズ教室 田原一矢)
「メモリアルな期で田中優子さんの特別レクチャーもあると聞いて、
 今だと思った」      (ミネルバ・ロードス教室 重廣竜之)

 講座の節目がそれぞれのターニングポイントに重なり、受講へと背中を押した。「学校」と掲げているものの、イシス編集学校は、他の学校とまったく異なる。そのひとつが、自ら進んで同じコースを受講しなおす学衆がいることだ。普通の学校では、卒業の資格を得られなかったときくらいだろう。ましてや、先生と生徒というロールが入れ替わることなど考えられない。イシスではそれが日常的に起こる。

 

 代々ビオトープ教室の鈴木哲也は「せっかくの再受講ならではの楽しみ方をしたい」と前回の自らの回答を振り返ったうえで、今回の回答づくりにあたる入念さだ。師範代が変われば、指南も変わる。現師範代の受容力と回答の別様の提示を絶賛する。指南をもらう度に、ワクワクが止まらない。

 師範代の指南に留まらず、共に学ぶ学衆の回答と発言に感服しているのがアスレ・ショーコ教室の岡本尚だ。「言葉を発すること、書き込むことに躊躇がない。今までになかった構えだ」。まさに50期[守]の別院では、学衆の発言が鳴りやまない。「編集で何かを変えたい」と対話が幾重にも連なる。

 傑作ペパーランド教室の柳川忠之は「もっと師範代の指南の懐の深さを引き出したい」と虎視眈々だ。場に集う一人一人がもつエディティング・キャラクタを最大限に引き出すのがイシス流。学衆の立場になっても、この想いは変わらない。

 「社会問題を地にして稽古すると決めている」と回答前に本屋に出向く日々を過ごすのが、参画さしかかる教室の野崎和彦だ。今までとは異なる制約をかけての稽古は負荷を伴う。「少し疲れ気味」と苦笑しながらも、社会の見え方が変わり、変える糸口も見えてきた。

 

 

 あらゆる編集に起こっているインプットからアウトプットのプロセスを取り出したのが守の型である。情報の収集、入れ替え、関係づけ、構造化、表現までを38の型でカバーする。再受講者たちは、守の型を学んだのち、破でメディア・プロジェクト・クライアントを想定した実践稽古で型を使い倒し、師範代として初学者に型を語る体験をしてきた編集猛者である。なかには、離に進み、「世界」の見方・読み方・語り方に挑戦して、方法知を磨いた者もいる。

 

 2時間ばかりの対話を経て「この後も、更に楽しみます」と意気があがる。ここに集うまで、忍びの者のごとく「再受講」という属性を隠してきた7名は、イシスのこれまでとこれからを繋ぐ者として、素性を明かし、場に身を投じる覚悟を新たにした。

 

 守の型は、私たちにどんな情報へのアクセスをも可能にしてくれる。38の型が「世界知へのインデックス」と言われる由縁もここにある。講座のひと周り目を済ませた猛者たちは、自ら意図して、編集稽古の「注意のカーソル」を引き上げ、「ルル三条」をアップデートできる状態にある。稽古と型を改めて身体に通す冒険を経て、彼らは、どう世界にアクセスしなおし、どう関わっていくのか。その来し方・行く末を、教室仲間はもちろん、多くのイシス関係者が注視している。

 

 

◆「Return to 守」をめぐるQ&E 参加者

 とれもろドローン教室 新井浩、参画さしかかる教室 野崎和彦、

 ダルマ・バムズ教室 田原一矢、ミネルバ・ロードス教室 重廣竜之、

 アスレ・ショーコ教室 岡本尚、代々ビオトープ教室 鈴木哲也、

 傑作ペパーランド教室 柳川忠之

 

 鈴木康代学匠、石井梨香番匠、若林牧子番匠、渡辺恒久師範、
 佐々木千佳学林局長、
吉村堅樹林頭、師範阿曽祐子

 

ーーー

◆51[守]申し込み受付中・「共割(ともわり)」できました!

 イシスご経験者とご紹介者の2名で[守]を受講されると
 2名でお一人分の受講料になります。
 年末年始にお仲間を誘って、ぜひご自身のReEditも!

 [守]基本コース(51期) 
 2023年5月8日~8月20日
 申し込みはこちらからどうぞ。

 

 

  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。