この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

日本にちりばめられた師範代が本楼にむかって移動中、物語のようです。とは、11月26日(土)朝の白川雅敏師範の言葉である。セイゴオ知文術課題本『地球にちりばめられて』の多彩な登場人物たちが、いろんな国からアルルに大集合したことに準えている。13:00、ついに念願の49[破]全員集合が実現した。10人の師範代が北海道、栃木、長野、関西各地、首都圏各所からやってきた。師範、番匠、評匠、学匠も揃っている。それだけで何かを達成した気分になるくらい、久しぶりのことだった。
コロナ禍でリモート開催・リモート併用を余儀なくされつづけた伝習座は、すでに11回を数える。でもこれが本来なのだ。昼から夜まで、ブビンガの周りに集まって、新たな方法の束を受け取り、互いの表情を見ながら問感応答返を交わし続ける。横顔や後ろ姿、声と姿勢、服装とノート、お菓子に雑談、そんな超部分からも相互編集は起こっている。師範代がここまで約2カ月の手ごたえを語り、師範のアドバイスをもらう。野嶋真帆番匠による物語編集術のレクチャーが始まる頃に、松岡校長がゆったりと登場した。
「書く冒険と読む冒険のための物語編集術」と題した講義に、校長が折々「それはね」「もっというとね」と奥義を重ねる。物語編集術のためのワークや、プランニング編集術のためのディスカッションで、師範代と師範に番匠も評匠も入り混じって膝詰めでQ&Eする。いっときも休まず編集を回し続ける一日であった。すべてのプログラムを終えたあとの振り返りでは、自らぐんと遠いターゲットを設定しなおす師範代の発言がつづく。校長から個別にディレクションが飛ぶこともあり、まさに格別であって本来である伝習座となった。
校長からのアドバイスは、いつもタイムリーに世界とつながっている。サッカーW杯初戦で、大胆なメンバーチェンジによって金星をあげた日本代表にあやかって、「自分の中でメンバーチェンジせよ!」。師範代の自己イメージを一瞬で書き換えた。師範代たちは「たくさんの私」のオーダーを入れ替えて後半戦に臨むことだろう。伝習座で集まったお互いの面影もしっかりメンバー入りして待機している。
スチール写真:森本研二
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。