【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし

2022/11/11(金)08:00
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スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。

感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントである。


 

 振り仰げば赤い月。振り返れば赤い奴。

 

 エントリーまで5日。皆既月食の夜に現れたエアサックス加藤は追い込まれていた。「まだ文章には書けていなくて、すみません。章ごとにフラジャイルってこういうもんだっていうのはまとめてみたんですけど、それしかできてないです」。オネスティー上杉と編集天狗が、加藤のPCを覗き込んでみると、アウトライナーで章立てされて、そこに長々と文章が書き込まれている。アウトライナーの良さは活かされておらず、ただ要約しただけの文章がだらだらと続いている。

 

 言い訳はいい。フラジャイルの腑分けは、グループ分けはどうなった。初稿を出すという締め切り、約束はどうなった。天狗の顔はさらに紅潮した。いますぐラベリング・トラベリングしなさい。制限時間は20分。終わるまで絶対に帰さない。

 

 「できました」。できるじゃないか!追い込まれればできるのだ。加藤は3つにフラジャイルを分けていた。じゃあ、次はそれを文章にしてみなさい。「できました」。加藤はフラジャイルのプロトタイプ的な説明を書き連ねていた。ダメ、やり直し。それぞれのフラジャイルにステレオタイプをつけなさい。例示を3つずつ出しなさい。「できました」。よし、つぎはまたそれを文章にしなさい。「書きました」。

 

 鬼の形相で背後から迫る天狗におびえる加藤を見かねて、オネスティーがまず私が読んでみますねと声をかけた。「うん、これまでのエントリーできなかった加藤くんの文章とは全然違うことが取り出せていると思うし、加藤くんのフラジャイルの見方もすごく変わったと感じられたんじゃないかなと思うんですね」。お抱え役上杉の丁寧なあたたかい言葉に加藤の顔もほころんだ。

 

 「でも、このあとどう書けばいいのかわからないです」。どこまでも手のかかるエアサックスなのだ。守の型を使い尽くすべし。BPTを君は忘れたのか。ベース・プロフィール・ターゲット。2回も突破できず、エントリーもできず、独りよがりなフラジャイルに酔っていた君がベースだ。今回あらためて『フラジャイル』を読み込んでみて、どう変わったのかがターゲット。そして、ターゲットに向かうプロフィールは『フラジャイル』の中にあるでしょうが。ここからあとは師範代と教室の仲間と頑張りなさい。

 

 ラベリング・トラベリング、略図的原型、BPT。エアサックス加藤がすっかり忘却している守の型は、編集天狗からあらためて手渡された。ここからは天狗とオネスティーはいない。でも加藤はひとりではない。安田晶子師範代やヤマネコでいく教室の学衆がいる。エアサックス加藤は、初めてのエントリーの栄冠を勝ち取ることができるのか。それともまたもや現実逃避を重ね、天狗の鉄槌を受けることになるのか。次回のドキュメントに乞うご期待である。

 


【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー

【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし(本記事)

■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!

■【エアサックス加藤の三度目の突破02】インタビューは天狗さまに

【エアサックス加藤の三度目の突破01】編集天狗と突破を誓う!

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。