この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

多読ジムが出版社とコラボする企画「”版元コラボ”エディストチャレンジ」も第三弾を迎えました。第一弾の太田出版、第二弾の工作舎、そして今回、第三弾のコラボ出版社は春秋社に決定しました。
台風去って、猛暑は過ぎ去り、ひんやり秋風の涼しい季節となってまいりましたが、春秋社のブックセレクトは「北斎・芭蕉」に、「摩多羅神」、「ベートーヴェン」と、まさしく”猛書”揃い。「本まみれの読書の秋」にピッタリです。
https://edist.isis.ne.jp/just/tadokugym_season12/
さて、毎度繰り返しにはなりますが、「エディストチャレンジ」の概要をあらためてご説明します。
エディストチャレンジは、コラボ出版社の編集者さんが選本した”トレーニングブック”をもとに、三冊筋のエッセイを書く、というお題です。多読ジムの受講者であれば誰でもエントリーすることができます。
そしてエントリー作品の中から佳作として選ばれた作品は、イシス編集学校のウェブメディア「遊刊エディスト」に掲載されるとともに、出版社のSNS等でも取り上げてもらいます。さらに、その中から最優秀作品を選出し、アワードの発表も行います。記念すべきコラボ第一弾の「それチン大賞」(太田出版)は石黒好美さんが受賞しました。
https://edist.isis.ne.jp/dust/sorechin_interview01/
さらにさらに、今回は賞品もあります。実は、エディストでは公開しておりませんでしたが、第二弾の多読ジム×工作舎でも優秀賞の受賞者には賞品がでます。工作舎ならでは、超貴重本の『遊 1001号 相似律』です。
第三弾の賞品もどうぞお楽しみに。
◉ ◉ ◉
それでは本題のトレーニングブックのご紹介です。
春秋社の編集担当さんが推薦文を届けてくださいました。
◎山本ひろ子『摩多羅神(またらじん)――我らいかなる縁ありて』
本体3500円+税
A5判/上製 400頁 2022年8月刊
本体2300円+税
四六判/上製 272頁 2022年4月刊
三冊すべて、今年2022年に発刊されたできたてほやほや、ピカピカの本たちです。とくに『摩多羅神』は8月に出版されたばかり。著者・山本ひろこさんといえば、千夜千冊1087夜『異神』でも取り上げられていますね。
山本ひろ子ファンの代将も以前に『異神』から牛頭天王をピックアップして三冊筋プレスを書きましたが、ただし、この『異神』は絶版本なので、中世神話の秘教世界を旅するなら『摩多羅神』こそ夢見る枕にしてください。
https://edist.isis.ne.jp/post/sansatsukin03_quim/
『ベートーヴェン症候群』の著者・マーク・エヴァン・ボンズは他にも『「聴くこと」の革命: ベートーヴェン時代の耳は「交響曲」をどう聴いたか』(アルテスパブリッシング)があり、学術誌『ベートーヴェン・フォーラム』の編集主幹も務めたことがあるそうで、どうやらゴリゴリのベートーヴェン主義者のようです。
イシス編集学校のベートーヴェン主義といえば、思い浮かぶのは太田香保総匠ではないでしょうか。エディストには「ルートヴィヒに恋して」というエッセイがあり、その中では『「もし無人島に一冊だけ持っていくなら何の本?」と聞かれたら、迷うことなく「第九の総譜」と答えたい』とも告白しています。『ベートーヴェン症候群』を起点にして、多読ジムにもベートーヴェン・ムーヴメント到来か?
https://edist.isis.ne.jp/nest/otasis_7/
『渾沌の恋人』の恩田侑布子さんは、『余白の祭』(深夜叢書社)で第23回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した俳人です。その選考人が松本健一さんでした。
松本さんは、千夜千冊1092夜『日本の失敗』の著者であり、残念ながら2014年にお亡くなりになりましたが、松岡正剛校長が非常に信頼を置き、親交を深めた方でもあります。その松本さんが『余白の祭』について「現在衰弱している文学シーンを刷新するような変革のエネルギーを秘めた作品」と評しています。このレコメンドはただならぬことです。『渾沌の恋人』の書籍案内には、『余白の祭』以来「8年がかり魂の結晶」とあって、これは期待しないわけにはいきません。
ちなみに『渾沌の恋人』はタイトルに「恋人」というメタファーが使われていますが、恩田さんが「十五の時に出逢った初恋の男」はなんと「荘子」だったそうです(「ドゥマゴ文学賞」受賞コメントより)。
摩多羅神か、ベートーヴェンか、北斎・芭蕉か、”三書三様”、よりどりみどり、全部読みも結構です。版元コラボへのエントリー、楽しみにお待ちしております。
Info
◉多読ジム season12・秋 三冊筋プレス
「”版元コラボ”エディストチャレンジ」◉
∈出版社 春秋社
∈トレーニングブック
◇『摩多羅神(またらじん)ーー我らいかなる縁ありて』
◇『ベートーヴェン症候群ーー音楽を自伝として聴く』
◇『渾沌の恋人(ラマン)ーー北斎の波、芭蕉の興』
∈参加資格
∈DESIGN the eye-catching image
穂積晴明
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。