この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

自分史をグラフィックにする。
48[破]では、林頭の掛け声によってクロニクル番外お題「全然アートなわたし」が立ち上がる。イシス編集学校は言葉の学校であるが、自分史クロニクルを1枚の紙にグラフィックとしてまとめることにチャレンジした。感門之盟ではオリーブ・ビリーブ教室から私を含めて3名の学衆が「全然アートなわたし」を披露することになった。
インタビューが終わり、緊張が途切れぬまま舞台袖までの記憶はなかった。私たち3人(河野智寿、中川治靖、一倉広美)の前にふらりと校長が現れた。愉快げな声で「白地に黒の絵は力量が要るね」と声をかけられ、イラストへのクロスエディットなお題が飛び込んだ。
「漫画を描いてみたら。ストーリーを作るのがいいからね」
思いも寄らない助言に胸を突かれる。一つ扉が開いたように思った。
クロニクル図をあらためて見ると、それは憧憬の繁茂だった。幹から伸びた小枝も支線も支流も路地も憧れの蕾で撓っていた。枝が指す先には三十年来見上げていた松岡校長があった。流星が引き寄せられて衛星となるように、私は校長を巡る欠片となれたのだろうか。この日の衝撃は甘酸っぱく収斂された黄金色の光子(フォトン)となった。それを記憶の一番突き当たりの丁度良い大きさのポッケにほろりと仕舞うことにした。
いつでも光を感じられる私の宝物だから。
記事: 河野智寿(48[破]オリーブ・ビリーブ教室)
編集:師範代 山本ユキ(48[破]オリーブ・ビリーブ教室)
師範 華岡晃生
華岡晃生
編集的先達:張仲景。研修医時代、講座費用を捻出できず、ローンを組んで花伝所入門。師範代、離を経て、[破]師範に。金沢のエディットドクターKとして、西洋医学のみならず漢方にも造詣が深い。趣味は伝建地区巡り。
突破後、なのに50[破]が熱い。感門之盟を1週間後に控えた9月9日、20人のアーティストがオンライン上に集った。クロニクル編集術の番外稽古「全然アートなわたし」の“回答”を持ち寄り、教室を越えて集う企画「アート咲かす展 […]
善光寺へ通ずる長野大通りにはエディティング・セルフが花開いていた。 2月某日、青空が広がり冬のピンと張り詰めた空気の中、49[破]チームあれりすか(おにぎりギリギリ教室・ヤマネコでいく教室)の面々が合同 […]
〈突破者が書く!第3弾〉【79感門】ことことと俳句がつなぐイシスの和(一倉広美)
IT企業に務める中、閉塞した毎日に一倉はとにかく笑いたかった。「俳句」への出会いは笑うために訪れた落語にて。その場の勢いで句会に入会したのが2014年。以降、俳句にのめり込んでいる。 「俳句は続けたほう […]
〈突破者が書く!第2弾〉【79感門】幼心を再編集する全然アート(中川治靖)
遅れて繋いだ突破後のzoom汁講、最初に耳に入ったのは山本ユキ師範代の檄だった。 クロニクル番外お題として今期新登場の「全然アートなわたし」へのエントリー者が少ないことが原因のようだ。普段は優しい先生が […]
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。