この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

免疫学者の多田富雄さんは、能と免疫学という、異質が行き来する世界を扱うものに向きあわれた。脳梗塞で倒れ、病床で意識を取り戻された時、能の謡曲の「隅田川」や「哥占(うたうら)」をそらんじたという。
科学ジャーナリストの石弘之さん(AIDAゲスト)は、5歳の時から植物学者の牧野富太郎の自宅に出入りした。大学で植物学をやる予定が、マクロな環境や文明と、ミクロな野鳥や鉄条網や砂の変化のあいだをつぶさに観察する記者、探究者になられた。新刊は『噴火と寒冷化の災害史』(角川新書)だ。
松岡校長は、セミの幼虫を羽化させたり、中学科学部でホコリの培養をしてみたりと、リケオ(理科少年)だった。ところが、知らないことに疑問を持って体験することと、理路整然と教えられることのギャップで、高校では生物以外面白くなくなってしまった。この隙間を埋めたのが本だった。やがて、科学者の見方のサイエンスを可視光にする、高木貞治や南部陽一郎や牧野富太郎のエッセイ・論文集『日本の科学精神』全5巻を編集された。
理化学研究所創立100周年を機にスタートした「科学道100冊」プロジェクトが、6年目を迎える。
旬のトピックなど三つの軸で選んだ「テーマ本」50冊と、時代を経ても古びない良書として選んだ「科学道クラシックス」50冊の合計100冊で構成した「科学道100冊 2022」を11月後半に発表する予定だ。
選書だけではなく、ブックレットや展示ツールも制作し、これまで500箇所をこえる全国の学校、図書館、書店に「科学道100冊」の特設棚を編集してもらう仕組みも構築してきた。ジュニア版は親子でも楽しめる。
まもなく、フェアや展示を開催したい団体さま向けに、先行予約をスタートする。本という情報パッケージが記憶し届けつづけている、科学者の生き方や考え方、科学の見方を、「科学道100冊」をきっかけに共読していただきたい。
[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]
//つづく//
橋本英人
函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。
かつて校長は、「”始末”とは、終わりのことですが、エンディングとビギニングは一緒だということ。歌舞伎役者が最後に舞いたい踊りは、自分を目覚めさせる踊りかもしれないわけで、終わりのメッセージとは、何か始まりを感じさせるもの […]
「日本流(経営)の本質は、異質なものを編集する力だったはずだ。ーーー異質なデータを価値ある情報に編集する知恵がこれからの勝負となる。それをセマンティックプラットフォーマーと呼んでいる。」 一橋大学ビジネスス […]
【参丞EEL便#034】 職場から「おしゃべり」が失われている?
ブライアン・イーノは、1996年に「scenius(シーニアス)」という言葉をつくった。「scene + genius」。文化的および知的進歩の多くは、あるシーン(やリアルな場所)から、一種の集合的魔法をおこした多数の人 […]
【参丞EEL便#033】「ちえなみき」で触れる7つの文字の世界
ひとつ、「雲」という字は元々は「云」と書き、これは雲気たなびく下に、竜のくるっと巻いたしっぽが見えている形である。大昔、人々は雲の中に「竜」がいると考えていた。 来場者10万人を突破した福井県敦賀市「ちえなみき」で、「一 […]
赤坂から、赤堤へ。 2012年12月、EELは6万冊の本と一緒に、赤坂から赤堤(最寄りが豪徳寺駅)へと引っ越しをした。知の移転を行った。 そこからちょうど10年、校長への献本や千夜本や、EELプロジェクト関 […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。