【第79回感門之盟予告 新たな価値を創造する―P-1グランプリの挑戦】

2022/09/06(火)09:00
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 もはや3月と9月の風物詩となった感門之盟でのP-1グランプリ。[守][破]の集大成となる[破]最後のお題、プランニング編集術の成果を披露し、世に問う。プランニング編集術では、入門以来の1年間に学んできたすべての編集術を駆使してハイパーミュージアムを企画する。回答と指南が終わり、教室が閉じた後、P-1グランプリへのノミネートが発表された。

 

 ノミネートされたのは、4プラン、プランナー学衆とそのテーマをご紹介する。

 

  岸真喜子さん(MOT勿体教室)「せっけん」
  市村安紀子さん(特Bダッシュ教室)「引き出し」
  依藤 聡さん(伝束スパーク教室)「標識」
  新垣香子さん(シード群生教室)「源氏香」

 

 それぞれ期中の稽古では、ミュージアムのネーミングをはじめ、プランの詳細まで考えたのだが、P-1ではそれをいったん脇に置く。テーマに選んだモノをあらためて見つめ直して、クラスメイト、師範代、師範とともに再編集する。ハッキリ言って、グループワークでの全編再回答である。

 

 ここは通常の稽古のルルの外なので、オンライン会議もOK。教室メンバーが集まっては話し合い。少しプランが進んでは、手分けして素材を探し、シナリオを書くというのがここ10日ほどつづいている。みな仕事があり家庭があり、相当な負荷であるが、<勧学会>からは悩ましくも楽しそうな声が聞こえている。相互編集こそイシス流の仕事の秘訣なのだ。それを体感してもらっている、とは吉村堅樹林頭の弁。

 

 9月3日(土)には、3教室がひと通りのプレゼンを作り上げ、吉村林頭、中村まさとし評匠の前で初リハーサルを行った。1週間前に、ここまで構成とシナリオができているのは素晴らしい、と労いの言葉につづいて、さっそくディレクションが飛ぶ。ハイパーミュージアムの「仮説」は見えてきている。そこへ至るプロフィールを豊かに説得的に描くための工夫がさらに必要だ。モヤモヤの残るところについて意見を交わし、[守][破]の方法をつかう具体的なアドバイスをもらう、各チーム小1時間のリハとなった。のこる1教室も5日(月)にはリハーサル。8日(木)の本楼での通しリハを経て、10日(土)の本番をむかえる。

 

 「せっけん」「引き出し」「標識」、誰もがよく知っているモノだ。その中からいかに、未知の要素・機能・属性を見出し、アナロジーを働かせて新たな価値を打ち出せるか。「源氏香」という完成され洗練された遊びから、いかにアフォードされて別様の「いま」に響くコトを描き出せるか。

 

 現代の日本にあるものは、編集され尽くし、最適なところに落ち着いているように見える。便利で安全な世の中はありがたいけれど、わたしたちは変化を求め、遊び続けるホモルーデンスでありたい。冒頭の画像に置いた『破壊的イノベーター、その視界』では、松岡校長がインタビューを受けており、そこでは角川武蔵野ミュージアムについてこのように語っている。

 

 「想像力の翼を広げて連想を喚起するミュージアムにしたいというのが私の考え方です。その連想によって、誰かと会いたくなったり、何かを食べたくなったり、着たくなったり、聴きたくなったりするように、このミュージアムで何かを得たくなるようにしたい。」

 

 訪れる人の連想を誘い、行動を促すミュージアムにする。P-1グランプリに出場するチームが目指しているもココだ!人の心を動かし、行動を変容させる――編集力を駆使した仕事術の奥義に迫っているのだ。[破]学衆と指導陣が一丸となっての、稽古を超えた稽古を目撃せよ。


 【P-1グランプリ】第79回感門之盟 9月10日(土)

 参考文献:『破壊的イノベーター、その視界』

 

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。