近大の織姫・彦星たちがミメロギアの短冊に綴る思いとは【49[守]】

2022/07/07(木)21:46
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実地で知をふるう近大生は、忙しい。世間が七夕祭りで賑わう今日とて、その例外ではない。学業に、アルバイトに、各種プロジェクトに精を出す実学の織姫と彦星たちが、忙しい合間を縫って49[守]近大学衆の交流会、ミメロギア祭りに集ってくれた。

 

49[守]は折しも、第2回番選ボードレールの推敲たけなわ。今回の交流会は、Zoom越しに作りたてのミメロギアを交換し合うオンライン稽古がメインだ。共有したお題は「相撲・ダンス」。想定を超える名作の連打に、近大番一同瞠目する。リアルタイム稽古の効果も後押しし、学生たちの手数は多い。その中で、豊かな語彙で言葉を動かす編集(切実ゲノム教室O)、イメージ豊かな場面を想起させる編集(男装いとをかし教室M)、大胆に「らしさ」を被せる編集(きざし旬然教室M)、情報を切り出すクローズアップが巧みな編集(唐傘さしていく教室U)と、一人ひとりの得意手が見事に浮かび上がっていった。ここで誕生した作品群は、いずれ今期の番ボー講評を賑わすことだろう。

 

近大番のひとり梅澤奈央は、まさに今15[離]を受講中。苛烈な講座でともに奮闘する戦友の中には、この近大交流会出身者もいる。梅澤は火中から先輩の[離]での消息を伝え、編集道の奥行きを示した。「Мくんは[守]の型が、[離]に入ってよく分かったと感じ入っていました。その姿に、我々大人の離学衆も勇気づけられています」

 

近大学衆たちは、短冊に願いを書くごとく、編集稽古のお悩みも寄せてくれた。すぐさま、編集の先達たちが応答する。

 

 

問:「習った型に情報がうまくはまりません。70%くらいで妥協してしまう感じがします」(切実ゲノム教室O

答:「7割も型を使えていると考えた方が良い。今分からない3割には、これから先のお題から戻ってくるとよい」(近大番・景山)

「そもそも芸事は『できた』と思ってしまったらそこで終わり」(編工研・衣笠)

 

問:「実生活でアイディアを出し合うときに、地と図の編集を応用しようと思いましたが、うまく使えている気がしません」(きざし旬然教室M

答:「地と図の編集は『地』を動かすことが骨法。少しずつ『地』を身近なところから遠くにずらして、編集を広げてゆくとよい」(近大番・景山)

「無責任に『地』を遠くに飛ばすことも有効。飛距離の大きな編集を試すことで、初めて『中距離』が見えてくる」(近大番・川野)

 

 

すでに自己の思考プロセスに自覚的な「編集的状態」を自ら作り、実世界に編集の型を応用しようという気概も旺盛。今期も近大学衆は、閉塞した世界を切りひらく編集の方法を着実に我が物としていっている。

 


イシス編集学校49[守]近大番

 景山和浩川野貴志梅澤奈央(イシス編集学校)

 衣笠純子、橋本英人、山本春奈、富田七海(編集工学研究所)


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  • 川野貴志

    編集的先達:多和田葉子。語って名人。綴って達人。場に交わって別格の職人。軽妙かつ絶妙な編集術で、全講座、プロジェクトから引っ張りだこの「イシスの至宝」。野望は「国語で編集」から「編集で国語」への大転換。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。