この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

東大阪に「イシスの知のトポス」あり。近畿大学ビブリオシアターで「近大INDEXプログラム」がはじまった。
お題開発には、吉村林頭の編集方針のもと、1名2題ずつ、川野師範、梅澤師範、金代将が超高速で携わった。テスト教室の師範代は、47[守]どんでんコマンド教室・中村慧太にお願いした。実は現役近大5年生!(1年は遊学ならぬ休学)の中村師範代は、大学卒業と同時に、母校の図書館スタッフと学生の計6名を指南した。
プログラムのアウトプットは「棚語り」である。65ある近大INDEXの棚から1つ、師範代が受講者にわり当てる。もちろん、お題はイシス式。自分の好奇心をヒダヒダにして1冊の本に入り、3冊の束で知をドンデン返しし、本棚と世界のウラハラを語る。
未入門の図書館スタッフSさんは、お題が出ると即回答を連打し、あっという間に教室をリードした。トムキンスに火星にマット・デイモンに、SF好きなわたしが溢れだした。
2022年度は、”本番”教室が動きだす。本プログラムが近大INDEX版の[守]なら、次は[破]や[離]の開発を目指したい。そのほか近大×イシスのプロジェクトが連打される(予定だ)が、これはその序章である。
新年度スタートの2022年4月1日(金)、編工研@豪徳寺では、年1度の全社キックオフがあった。松岡さんからは「イシスやEELでは、絶対少数のオーバーエクステンションが、学びや場の相転移を起こしている。それを多様に語りなさい。」とスタッフへヒントがあった。まさに、中村師範代とSさんのあいだで、それが動いた。
近大INDEXプログラムには「手書きお題」もある。ビブリオシアター2Fは3万冊の漫画・新書・文庫が並ぶDONDENだが、 図書館スタッフSさんは、棚03「時空をめぐる宇宙力」のキーコミック『プラネテス』(幸村誠)のコマを組み合わせて、模写した。宇宙に惑う者の姿を(その決意の眼差しを)、棚を象徴するイメージとして一気に描いた。
[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]
東大阪通信 vol.1
//つづく//
橋本英人
函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。
かつて校長は、「”始末”とは、終わりのことですが、エンディングとビギニングは一緒だということ。歌舞伎役者が最後に舞いたい踊りは、自分を目覚めさせる踊りかもしれないわけで、終わりのメッセージとは、何か始まりを感じさせるもの […]
「日本流(経営)の本質は、異質なものを編集する力だったはずだ。ーーー異質なデータを価値ある情報に編集する知恵がこれからの勝負となる。それをセマンティックプラットフォーマーと呼んでいる。」 一橋大学ビジネスス […]
【参丞EEL便#034】 職場から「おしゃべり」が失われている?
ブライアン・イーノは、1996年に「scenius(シーニアス)」という言葉をつくった。「scene + genius」。文化的および知的進歩の多くは、あるシーン(やリアルな場所)から、一種の集合的魔法をおこした多数の人 […]
【参丞EEL便#033】「ちえなみき」で触れる7つの文字の世界
ひとつ、「雲」という字は元々は「云」と書き、これは雲気たなびく下に、竜のくるっと巻いたしっぽが見えている形である。大昔、人々は雲の中に「竜」がいると考えていた。 来場者10万人を突破した福井県敦賀市「ちえなみき」で、「一 […]
赤坂から、赤堤へ。 2012年12月、EELは6万冊の本と一緒に、赤坂から赤堤(最寄りが豪徳寺駅)へと引っ越しをした。知の移転を行った。 そこからちょうど10年、校長への献本や千夜本や、EELプロジェクト関 […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。