【速報!校長メッセージ】私たちは骰子を振るたびに新しい世界に出合える【78感門】

2022/03/20(日)16:22
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さまざまな柄がリミックスされたストールが、背広の襟から見え隠れしている。2018年以来、松岡正剛校長が千夜千冊をリミックスして生まれてきた千夜千冊エディションをリ・リミックスしたLPを背景に、校長のオープニングメッセージが始まった。

 

リミックスで生まれているイシス編集学校

じつにたくさんのマルチスタイルとマルチアクティビティを持っているイシス編集学校は、校長の想像を遥かに超えているという。ではいったい、ほかの学校や組織と何が違うのか。その秘密は、経営陣と雇用人という二項システムではなく、人々の人生と活動がさまざまなポリロールとしてリミックスされているところにあるという。

 

私たちは世界史を失っている

校長は、私たちを取り巻く社会の奥へと文脈を広げ、ひっ迫したウクライナ情勢の奥にあるものを読み解く。じつは、世界史は教科書で習う四大河川ではなく、黒海の周辺でずっと動いている。そうした世界史を失っているまま、アメリカ、大英帝国、NATOなどによって牛耳られてきた今、その矛盾が噴き出てきているのだというのだ。歴史を展いた校長は、猛威を振るっているCOVID19にも触れながら、生物の領域へとリミックスしていく。人類はずっとウィルスとともに暮らしてきていたにもかかわらず、生物とは、ウィルスとはいったいなんなのか、よく見えていないのだと。

歴史的現在を語る方法を失っている今こそ、編集学校で学ぶいくつかの手法を、身近なところから世界史や微生物を語る方法へと繋げ、仲間へともっていってほしい。これが、第78回感門之盟を「REMIX・編集草子」と名づけた理由だと、校長は明かす。

 

編集学校のお題の奥にあるもの

ブライアン・ガイシンのカットアップの手法に触れた校長は、「世の中は骰子を振ってから始まる」というマラルメの言葉を引用し、リミックスの意味と重ねながら、既存の哲学、文学、思想といったジャンルを超えた情報へと、私たちを誘う。情報は至るところにこぼれている。私たちは骰子をふるたびに新しい世界に出合えるのだ。この偶然を取り込む骰子が、イシスのお題にあたるのだという。私たちはそれを組み立てて編集草子にしている。それが編集学校であり、インタースコアともインターアクティビティともいうのだと。

最後に校長は、リミックスのコツを伝授してくれた。「4か月間、頑張った仲間を言祝ぎながら、この二日間で体験したことを、ぜひリコールしてエディットしてほしい」

リコール(想起)から再編集へ。私たちのリミックスは続く。

 

写真:上杉公志

  • 丸洋子

    編集的先達:ゲオルク・ジンメル。鳥たちの水浴びの音で目覚める。午後にはお庭で英国紅茶と手焼きのクッキー。その品の良さから、誰もが丸さんの子どもになりたいという憧れの存在。主婦のかたわら、翻訳も手がける。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。