子どもかもしれない。 東広島市おやこブックワーク

2020/01/09(木)08:58
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[ 編集×学習 ]実践レポート001

 

『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)は、大人にも人気の絵本。ひとりの男の子がひとつのリンゴを巡って想像力のかぎりを尽くすお話だが、その尽くし方が著者のヨシタケシンスケさんの真骨頂で、ユーモアがありながら「発想の科学」の様相で展開する。

 

  

  『りんごかもしれない』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)より

 

そうした理由から、この本は編集工学研究所が理化学研究所と推進する『科学道100冊』に加わり、さらに、東広島市が新設したイノベーションラボ「ミライノ」で行われる親子ワークショップのための1冊に選ばれた。

 

子どもイシスプロジェクトのメンバー、得原藍がナビゲート役として飛んだ。サイエンスゼミ風の会場の中は、親子連れで満席。真新しい施設で初めての試みだった。

 

絵本を使うといっても読み聞かせに終わらないのがイシス式。主人公の男の子がリンゴからどう想像を広げたか、そのヒミツに注目する。そこには、シーンごとにいろんな思考の型(編集術)がひそんでいるのだ。

得原がそのヒミツをもとにしたワークの「お題」をナビゲートすると、親子でチャレンジが始まる。あっという間に対話の嵐だ。正解はないのにユニークな発想にはだれもが唸る。子どもは「むずかしいけど面白い!」、大人は「絵本は読むもの、とだけ思っていた」と声があがった。

 

大人の思考パターンが子どもの想像力を狭める。そんな「柔らかなリスク」は、親子の間にこんな「お題」や対話があるだけで、ふわりと遠ざかる。

イシス編集学校の師範代たちは、想像力を引き出す認知的道具による指南編集をISIS花伝所で徹底的に仕込まれる。「深い学び」の実践で知られるキエラン・イーガンがテキストだ。

でも、大人の成長を待つよりも方法の科学を学びたいのは、想像力を小さな胸に湛える子どもかもしれない。

 

 

 

科学道100冊プロジェクトについて。

子ども編集学校の活動はこちら。

 

第1回科学道100冊 ブックワークショップ アーカイブ

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コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。