もしも山本貴光が『情歴21』を読んだら…?【ISIS FESTA SP開催中!】

2022/02/23(水)21:22
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今さら聞けない「あの人の『情歴』活用法」が明らかに

 

情報の歴史21』を手にした方の多くが抱く共通の要望が二つある。一つは「どこから読めばいいのか」。もう一つは「他の人がどのように読み、活用しているのか」。

 

両方の要望にこたえる ISIS FESTA SP「『情報の歴史21』を読む」シリーズがいよいよ開幕した。

第一弾のゲストは山本貴光氏。ゲーム作家・文筆家であり、松岡正剛が座長をつとめるHyper-Editing Platform[AIDA]のボードメンバーであり、1996年の増補版以来、25年以上にわたる『情歴』ヘビーユーザーである。

 

そもそも『情報の歴史』はリニアなテキストに対し「ハイパーテクスト」の最たるもので、辞書やダイアグラムのように、どこから読み始めても、どこにとんでも、どこで読み終えても構わないメディアである。この遊刊エディストが乗っているウェブも、画像や動画やアプリを含めたハイパーテキストの一種である。このように「自分で読む順序が委ねられていること」がハイパーテキストたる『情歴』の読み方の醍醐味であり、悩ましさでもある。

 

ハイパーテキストの海で「問い」を立てる

そんな悩める『情歴』読者にむけて、ISIS FESTA SPで山本さんがまず勧めたのが「問い=Questionを立てること」である。山本さんは、連載中の「文学のエコロジー」(『群像』、講談社)でバルザックの『ゴリオ爺さん』を取りあげており、その執筆にあたり、「バルザックの執拗なまでの環境描写は、当時のメディアや芸術環境の影響をうけていたのでは?」という問を立てたうえで、バルザック生誕年である1799年の『情歴』のページを開いたという。そこで飛び込んできた歴象が「A.フンボルト」と「リトグラフ」だったとのこと。

 

フンボルトといえば、南米中心の旅行で植物の分布を一枚の上にまとめた人物。この分布図は今日の「インフォグラフィック」の先駆けとなっている。一方、「石版」を意味するリトグラフの登場によって、今まで以上に緻密な表現が可能になり、新たに雑誌に風刺画やカリカチュアが登場しはじめた。このように、問いによってバルザックの描写にあたえた影響に連動する情報が得られたという。

 

問いを立てて『情報の歴史』を読むのは、本屋や図書館で書棚の間を歩いていて、その時々の関心に応じて棚からある本が飛び込んでくるようなもの。つまり、関心と書棚(=問いと情報)の組み合わせによって、飛び込んでくる情報を動かすことができるわけです。(山本氏)

 

 

山本さんの講演は、その後も新たな使い方だけでなく、独自の書き込みルールや紙とデジタルとの使い分け、『情報の歴史』デジタル化に向けて考えるべき課題にまで及んだ。

 

次回のISIS FESTA SP「『情報の歴史21』を読む」シリーズは3月22日(火)19:30から。ゲストは社会学者の大澤真幸氏をお招きする。

 

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。