迷う前にもっぱら動け、歌え、進め!―48[守]

2022/02/21(月)08:25
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 「お題が届いたらサッと目を通して、コピペして会社に持っていく。通勤の車の中で考えて、会社に着いたら調べて、仕事前に投げる」。
平蔵もっぱら教室の第2回汁講で、学衆Iが稽古のダンドリを語った。学衆Mも「スマホに入れて、電車での移動、仕事の一服、いつも考えている」と続けた。開講してから3か月強、学衆たちは、どんなときもお題と共にあった。「いつも編集状態」に陥っている彼らの姿に、師範代の妹尾高嗣は満足の笑顔を浮かべた。わからなさと闘いながら、日常世界に型を探し続ける「いつも編集状態」からこそ、新しいものが生まれてくるからだ。

 全番回答期限が迫る2月上旬、一向に回答ペースがあがらない。ソワソワし始めた妹尾を横目に、ようやく038番が投げ込まれた。そこには編集術への信頼の言葉が添えられた。

 地と図、地と図と唱えながら情報を動かす意識をするようにな
 って、プクプクっと小さな変化が起こりはじめているようで、
 これからが楽しみですー。

 

 お題を、何回も何回も読んで、また読んで。
 こういった事かと、ボヤッと光が見えて、書いて、消して、加
 えて、引いて。ほんと編集だっ。

 

 卒門を決めた学衆にとっても、全番回答期限日は一大事だ。ゴールに向かって、ひた走る後続の仲間を放っておくことはできない。

 「最後まで走り抜けて」と『負けないで』(ZARD)が歌われた。すぐさま、学衆Ⅰが「あと一歩だけ、前に進もう」と『Progress』(スガシカオ)を贈る。学衆Mも「夢よ叶え」と『カイト』(嵐)で勢いづける。

 ゴールテープが切られるまで、応援歌が鳴りやまない。夕刻に「ひとりじゃない」と『Jupiter』(平原綾香)が響き渡り、2周目だ。学衆Ⅰは「何かが待っている」と『終わりなき旅』(Mr.Children)を持ち込む。妹尾は「負けない、投げ出さない」(『それが大事』大事MANブラザーズ)と檄を飛ばす。最後に学衆Mが「冒険は続く」と『GONG』(WANIMA)を歌いあげた。

 「ものすごい緊張感と共に踏み出した一歩を温かく迎えていただき、気づけば全番回答まで導かれていて、感謝感激です」。日付をまたいで届いた最後発学衆の声に拍手が鳴り響いた。平蔵もっぱら教室の学衆たちは、38の番稽古と指南を通して、編集術が人と事を動かすものであることを知り尽くしていたのだ。

 

 数日後、編集状態を続ける覚悟のメッセージがそっと置かれた。

 このままだと、少し変化の現れた筋肉が、またもとに戻ってしまう。
 お題と指南を求めて、次の門をたたこうと考えています。

まず動いてみることで、何かが見えてくる。48[守]の日々が教えてくれる。次の扉はもう開いている。

 

2022年2月2日開催の平蔵もっぱら教室の汁講

▲2022年2月2日(水)の汁講は、積読本ワークと卒門後についての語りで華やいだ。

  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。