【Archive】ジャイアンリサイタル――46[守]の大冒険

2022/01/26(水)09:00
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なぜ新師範代ジャイアンが遊刊エディストで連載を始めたのか。
もとい、イシスはなぜこんな暴挙を許したのか。
46[守](2020年秋~21年春)とジャイアンの連載を重ねながら、クロニクル風にたどってみることにしよう。

いざ、ジャイアンリサイタル開演!

 


2020年

08.01 33[花]花伝敢談儀
09.21 感門之盟、「角道ジャイアン教室」の名をもらう
10.03 46[守]伝習座(フライヤーの発表)
10.04 46[守]の「錬守」開始
10.15 ■ああ、それでもジャイアンは歌う ♯1
10.23 ■ジャイアン、恋文を請い願う ♯2


 

Q1.なぜ登板師範代の連載が実現したのか

 藤井聡太棋士が、史上最年少でタイトルを獲得した夏の出来事だ。敢談儀で、深谷もと佳師範(現・花目付)からZOOM越しに「ジャイアン」と命名され、すべてが始まる。
 感門之盟に関して、吉村林頭とメールのやり取りしたのだが、その中で林頭は「いずれ」と断って、ジャイアンにエディストを勧めた。ジャイアンはそれを「今」と誤読した。その日のうちに企画を2本持ち込んだのだが、それが「46[守]新師範代登板記」(■/計18回)と「ジャイアン人物伝」(★/計4回)だ。
 「新師範代登板記」は「今」しか書けない。何より、師範代や教室は丸ごとメディアになる、という確信があった。「ジャイアン人物伝」は、イシスと異物(外部)に対角線を引いたらどうなるか、という興味があった。
 企画は編集部を通った。だがGOサインはすぐには出なかった。
「しかし康代学匠がOKというかどうか……」
 それまで、登板中の師範代が記事を書いたことがなかった。負担が大きいからだ。林頭から康代学匠に問い合わせがいった。
「面白いですね、ぜひやりましょう!」
 
 林頭の勧誘、ジャイアンの誤読、康代学匠の英断。
 デビュー師範代の連載はこうして始まった。

 


10.26 46[守]開講
10.30 ■ジャイアンとコップ ♯3
11.06 ■ジャイアンの教室名 ♯4
11.06 角川武蔵野ミュージアムグランドオープン
11.13 ★三浦友和の「たくさんのわたし」 #001(指南・川野貴志さん)
11.20 ■ジャイアンは教室とともに ♯5
11.23 46[守]、第1回番ボー始まる(一種合成)
11.27 ■ジャイアンの1週間 ♯6
12.04 ■ジャイアン、祭の後 ♯7
12.05 46[守]伝習座2
12.11 ★藤子・F・不二雄の「幼な心BPT」 #002(指南・松井路代さん)


 

Q2.師範代ロールの負担にならなかったのか

 イシスではフィードバック(FB)を大切にする。いわゆる「振り返り」だ。ジャイアンにとって「登板記」はFBだ。師範代の誰もがやっているFBを、記事という形式で言語化したに過ぎない。そう考えてみれば、それほどの負担ではない。
 指南の合間に仕事をし、仕事の合間にエディストを書き、エディストの合間に指南をし、指南の合間に仕事をし……と高速で回していくと、それが常態化されていった。
 困ったのはネタだ。都合よく教室で事件は起きない。学衆に内緒で連載を始めていたので、事件が起きても書けないことが多かった(今読み返すと、事件の3、4日後には記事にしている)。アケフセのホドも難しい。そこでもうひとつの企画、「ジャイアン人物伝」を月イチで連載することにした。同人物伝の掲載週の登板記を1回休むことで、調整弁としたのだ。週一連載は変わりないのだが……。

 


12.18 ■ジャイアンの聞く力 ♯8
12.23 第1回ジャイアン汁講
12.28 ■汁講ぞ、ジャイアン ♯9
2021年
01.06 46[守]、第2回番ボー始まる(ミメロギア)
01.08 ★小林幸子の「型を破って宙を舞う」 #003(指南・丸洋子さん)
01.15 ■ジャイアン駅伝 ♯10
01.22 ■ジャイアンの破語り ♯11
01.29 ■ジャイアン五箇条 ♯12


 

Q3.学衆は記事をどう読んだのか。

 12月18日に事件が起きた。
 教室の中心メンバーのひとり学衆KD(「師範代代」ロールを担っていた3人のうちのひとり)が、「登板記」の記事に気づいたのだ。つまりその時まで内緒でいたのだ。この時、学衆KDがスピーカーとなって、仲間に広めてくれ、記事の存在が教室の第2エンジンとなった。自分たちのことが書かれている、ということを喜んでくれたのだ。
 この勢いのまま、第1回の汁講を開催(白状するが、記事にするべく、46[守]で真っ先に開いた)。汁講をきっかけに教室キャッチフレーズが生まれ、キャッチフレーズを第3のエンジンにしてミメロギアに突入。「ジャイアン五箇条 ♯12」は、ジャイアンにとっての師範代ロールを言語化したものだ。

 


02.02 節分汁講(第2回ジャイアン汁講)
02.05 ■節分とジャイアン――46[守]新師範代登板記 ♯13
02.12 ■1000番ジャイアン――46[守]新師範代登板記 ♯14
02.19 ★堀文子の「既知から未知へ」 #004(指南・太田香保総匠)
02.21 46[守]卒門

03.05 ■ジャイアン問答【対話篇】 ♯16
03.12 ■ジャイアン問答【不足篇】 ♯17
03.13 感門之盟
03.19 ■ジャイアンの盟 ♯18


 

Q4.登板記は誰に向かって書かれたのか。

「師範代のメッセージを記事から受け取っていました」と言ってくれたのは学衆HRだ。遊刊エディストの記事は、教室を動かす力になるんじゃないか、と思って始めたのだが、その狙いはあたった。
 登板記は、46[守]の学衆、師範代へのメッセージでもあった。記事を使って池に石を放りこみ、46[守]という場を動かす。角道ジャイアン教室の面々もその狙いをわかってくれていて、別院に何度も石を投げ込みに行っていた。
 この登板記を始めた時に、実は必ずやりたいことがあった。それが、学衆のインタビュー記事だ。「ジャイアン問答【対話篇】 ♯16」「ジャイアン問答【不足篇】 ♯17」として実現、6人の学衆が声をあげてくれた。
 そして最も意識していた読み手は「未来の師範代」だ。まだ見ぬ師範代に向かって、ジャイアンはこう伝えたかったのだ。


オレと一緒に遊ぼうぜ

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。