この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「らしさ」は守の主題だけに、本気でむつかしい。かつて伯楽と呼ばれた師範は語った。
この「らしさ」に真っ向勝負を挑んだのは、48[守]平時有事教室師範代、石黒好美である。
ターゲットは12月12日の汁講。開講してから3週間で交わしたテキストだけを手がかりに、学衆の似顔絵を描くというのだ。
汁講当日は参加者にカメラオフでZoomに入るというルールを課した。似顔絵をお披露目したのちにカメラオン。画面上で「ほんと」と「つもり」が並ぶ演出も万全だ。
「Tさんは、ちゃんとした高田純次だと思うんですよね~」との前振りで似顔絵を投影する石黒。現れたTさんはこの通り。
この日に似顔絵を用意した理由を石黒は語る。「『コンテンツの秘密』という本に、アニメのキャラクターは、人間のアタマの中にいる人や動物を模倣していると書かれていました。だったら顔を見なくても似顔絵は描けるはずだと試してみたんです。カブキのお題で稽古した“らしさ(略図的原型)”は、物事の本質に一気に到達する力を持っています」。似顔絵は本質に到達できたのか。汁講で発せられた学衆の言葉と並べてみよう。
石黒「Aさんの回答はキラキラしている」
Aさん「日々のお題をみて、調べることが当たり前になった。何かが起こった時に流さないようになってきた」
石黒「毎日お仕事頑張っている男子」
Mさん「週末まとめての回答になりがちだけど、毎日続ける方法を見つけたい」
石黒「Nさんは絶対クールビューティー」
Nさん「夜型なので、寝る前にお題を見て、朝から考え、翌日の夜には回答を返せます」
石黒「自信あったんだけど、似てない?おかしいなぁ」
Yさん「創造的な人は意味の遠いものを組み合わせるのが得意なんです」
石黒「師範代以上に教室を見てくれています」
Sさん「師範代が常に動いていて、具体的な糸口をすぐにもらえ、稽古のペースが保ててます」
参加者からは「ホントにキラキラだ!」「メガネはないけど感じ出てる」「内面はこうかも」などの声が挙がった。
速修コースは用法3に入った。「不足もきっちり伝える師範代になる」と宣言した石黒の指南と「らしさ」の力を目撃した学衆の回答がアナロジカルウェイで響きあう。
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。