ISIS 20周年師範代リレー [第42期網口渓太 令和のイシス的バーチャルアイドル]

2021/11/21(日)09:35
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2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2020年6月に20周年を迎えた。第45期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、20年のクロニクルを紹介する。

 

◇◇◇

「平成最後の○○」という言葉が連呼されたこの頃。第42期は平成最後の[守]であり、網口渓太は平成最後の[守]師範代の一人であった。

 

世界読書奥義伝[離]を退院したばかりの若き青年師範代は「初音ミク太郎教室」というラブレターをじーっと見つめていた。これは初音ミクと太郎なのか。初音とミク太郎なのか、それとも初音とミクと太郎なのか。時には引き寄せてみたり、時には突き放してみたり。謎めいたバーチャルアイドルとの二人三脚から師範代生活が幕を開けた。

 

強烈な教室名は強烈な師範代キャラを生み出すことがある。ともすると「初音ミク太郎」はその最たるものであると思うが、師範代網口渓太は「初音ミク太郎」という仮説的空席を教室に仮置きしたまま静かに、愚直に歩を進めていく。隣に寄り添ってくれているような抑制の効いた指南は心地よい。時々ぽろっと出る関西弁の塩梅は絶妙。網口の指南は、劇薬というより漢方薬のようにゆっくりじわじわと効いてくる。「師範代の指南を読むのが楽しみ!」と着実に学衆の支持を集めていった。

 

リアルでは緊張しすぎたせいか初めて学衆と顔を合わせた汁講では途中で師範代が救急車に運ばれるという事件が起きた。網口渓太という仮説的空席が残されたままで行われた汁講は「師範代救急車搬送」という爪痕を残し語り継がれる一幕となる。

 

「初音ミク太郎」はその後[破]では「初音イズタロー」に出世魚。それに留まらず、冊匠大音美弥子率いる「なにわのピラニア軍団」ともなり、校長松岡正剛からは「イシスiGen」として注目を浴びている。[花]の錬成師範も勤め上げ、今は立正佼成会[縁]コースで再びの師範代として教室に立っている。

 

ラブレターを大切に握りしめながら、網口は令和のイシス的バーチャルアイドルとして歩み続けている。

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

ソージ君とルイジ君、立川志の輔の落語「バールのようなもの」、そしてフェチが、私たちの指南の共通分母だった。編集フェチな仲間たちは数寄なバールに持ち替えて、破の師範代、離、エディット・ツアー、遊刊エディストと、新たな関係性の発見に奮闘している。

 

>これからメッセージ>

頭を抱えたネーミング、顔を晴らす比喩、粋な挨拶。イシスな言葉も交わされる社会へ。

 

初音ミク太郎教室 網口渓太

 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

◯「人間は絶対的なアイデンティテイを持たない」

1688夜 石黒浩『アンドロイドサイエンス』

…2018年11月09日

◎精と色気のある男の話

1690夜 原田芳雄『B級パラダイス/風来去』

…2018年12月06日

⦿好きで好きでたまらない場所はありますか?

1694夜 イーフー・トゥアン(段義孚)『トポフィリア』

…2019年1月11日

Designed by 穂積晴明

 

  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。