ISIS 20周年師範代リレー [第36期 藤田小百合 愛と気っぷで富山を編集王国に]

2021/10/10(日)09:00
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2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2020年6月に20周年を迎えた。第45期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、20年のクロニクルを紹介する。

 

◇◇◇

年季の入った編集コーチは、富山の学衆を見かけると彼女のことを思い出す。藤田小百合は、富山市にヒーリングサロンを構え、ラジオのパーソナリティも務める才媛だ。彼女のもとから編集学校の門を叩いた学衆は多く、その中からは師範代も輩出した。20代で重病を経験して以来分け入ってきた癒やしの道だが、編集工学はその道を深めるための最重要ツールとなっている。

 

 

藤田が登板した2015年末に、『インタースコア』が刊行。編集学校の実践と哲学を世に問うタイミングで、藤田は学衆の編集をかさね、あわせていた。力のあるメッセージを途切れず発信する熱意があり、教室も勧学会も広く使って、学衆のモチベーションを刺激しつづけた。

 

 

富山を「編集王国」にという野望も。リアル編集稽古・エディットツアーでは、新しい富山に出会うことを期して、当地を形容する常套句である「きときと」の使用を自らに禁じ、退路を断って別様の可能性に挑んだ。さらには視覚障害者たちにも編集稽古をと、校長本を音訳するボランティア活動も展開している。藤田の精力的な活動で、編集は県境も障害も、あらゆる境界を超える。

 

 

その後38守39破師範代を経て、41守師範として師範代を束ねたときに名づけたチーム名は「みっとライト」。いうまでもなくショウペンハウアーの「共苦」の概念にちなんでいるが、人の心のささやかな揺らぎに耳をすまそうとしてきた藤田らしいネーミングだ。これからも巡る時間の中で、藤田は人の身も心も再編集していく。

 

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

日本が「爆買い」に歓喜し惑溺しつつある頃、番ボーで年越しした36守には爆編旋風が起こっていた。突出した発言数と回答数は学匠に編集ギネスに載せたいくらいだと言わせ、最後までお題と時間と場の編集がイシスコアされ、卒門率91.5%の新記録を打ち出した。

 

>これからメッセージ>

忘却の彼方へと追いやられた小さな組織にも入り込んで、情報発掘、再編集が感染拡大していくことを期待します!

 

共術かさね教室 藤田小百合

 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

〇セイゴオが編集大先輩と呼ぶ男
1596夜 小林祥一郎『死ぬまで編集者気分』

…2015年12月15日

◎ルイスおじさんの変集編集術

1598夜 ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』
…2016年01月03日

⦿ワーグナーの真正な器量とは

1600夜 リヒャルト・ワーグナー『ニーベルングの指輪』
…2016年02月13日

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  • 川野貴志

    編集的先達:多和田葉子。語って名人。綴って達人。場に交わって別格の職人。軽妙かつ絶妙な編集術で、全講座、プロジェクトから引っ張りだこの「イシスの至宝」。野望は「国語で編集」から「編集で国語」への大転換。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。