この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「自由。自由。自由。自由。自由。それより他に、何の想ふことがあるだらう?」
南仏から豪徳寺に翔んできた俳人・小津夜景は、亭主である歌人・小池純代師範からのリクエストを受け、対談中に「オンフルールの海の歌」を朗読した。照度が落とされた会場に俳人の真っ直ぐな声が静かに響く。
2018年8月4日(土)、風韻講座特別篇「半冬氾夏の会・夏秋の渡り」が本楼で催された。第一部は小池師範から参加者への事前課題に小津氏が寸評をする”お遊戯”。お題は、小池師範が選んだ小津夜景の十句から各人が栞にしたい一句を選び、さらにその栞を挟みたい本を選ぶというもの。
例えば、「かつてこの入江に虹という軋み」にエドマンド・バーグ『崇高と美の観念の起原』。あるいは「夜の桃とみれば乙女のされかうべ」に澁澤龍彦『高丘親王航海記』。はたまた「からくりのしんがりに佇つ光かな」にジョージ・ガモフ『不思議の国のトムキンス』。
句から栞へ、栞から本へ。メディアを跨ぎながら、17文字から広がるイメージを引きのばしたり、膨らませたり、折り畳んだり、風に吹かれて韻(ひびき)に耽る。
朗読をする小津夜景氏
小池純代師範との対談
休憩を挟み、第二部は松岡正剛校長が加わって三者鼎談。第一部で披露した朗読に触れて、小津氏は「定型に生きることは自由を放棄することではない」「自由に対しては闘争的である」と自由への想い入れを明かした。ついで「定型、型の中に何層ものレイヤーがある」と俳句ならではのレイヤーの魅力を語らった。
松岡校長を加えての鼎談
閉会後のお土産には小池師範お手製の小津夜景句の栞が用意されていた。お気に入りの句とともに参加者たちは風韻の夢見心地もいっしょに持ち帰る。
半冬氾夏の会のあと、『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』(小津夜景/東京四季出版)の帯が<松岡正剛氏推薦>に変わることとなった。そこにはこう書かれている。「すばらしい。俳人のオヅさんが、好きな漢詩の数々を21世紀に移し、瑞々しい日々の想像力の糸で、これらを紡ぎなおしてみせた。脱帽だ。」
『カモメの日の読書 漢詩と暮らす』を手に。
後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。