ピラニアたちの指 ホンゴジラ・後の祭り【77感門】

2021/09/07(火)17:16
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事件は豪徳寺だけで起こるのではない。イシスの感門之盟は、海外からの参加あり、地方からの中継ありの多角型だ。今回は、Zoom越しでも「声がデカイ」と校長にドヤされた大阪のブックフェア中継&設営スタッフを一挙紹介。ナビゲーターは、5分間の中継のために東京から大阪へ緊急凱旋し、知祭り一揆の旗振り役となったホンゴジラ大音美弥子冊匠。(編集部)

 


林頭ヨシムラの睡眠不足な頭に閃いた一瞬のビジョンが、MARUZEN & ジュンク堂書店梅田店に集結した棚組隊に、「ピラニア軍団」の名を与えた。

 

この名づけが適正なものだったかどうか。川谷拓三を知らない世代の皆さんもご一緒に検証いただきたい。

 

しなやかなこの手の役目は、2F文庫本コーナーへの侵略である。角川ソフィア文庫の一角に訪れたお客様を否が応でも5Fへ誘導しようというミニPOP。エディションシリーズを際立たせるだけでなく、面陳された上段の本の邪魔にならぬよう、ギリギリの攻防が続いた。

 

 

手の持ち主は、この人である。中継シナリオが決まったとき、「アフロ、屋外でだいじょうぶなん?」と訊くサッショーの老婆心を粉々に粉砕したアンドロメダ・アフロ・ニシムラ(45期アフロル・テクノ教室師範代)。どうしてもかぶりものに目が行きがちだが、指先がいい仕事(ここではQRコードの解説)の要となる。作業終了後一揆買いしたのは、『ツァラトゥストラはかく語りき』フリードリヒ・ニーチェ(佐々木中の新訳!)。

 

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男性陣の手も負けてはいない。松丸エプロンの勝負服に身を固め気合を入れるサッショーに、「うわ、初めて実物見ましたー」とトロけたi-Genアミグチ(43期初音ミク太郎→初音イズタロー教室師範代)。右手からこぼれているのは両面テープ。固定する位置を決めて素早くお好み焼き返ししようとする一瞬なのである。これからは決して「猫の手」呼ばわりしないように。初音な一揆買いは、『江戸の読書会 会読の思想史』前田勉。

 

 

「月を指せば指を認む」というが、右手の指は貨幣を指し、かたや目線は明らかに「$」を見据えている。「字紋」パネルの敷き詰めという職人技をアミグチとともに淡々と実行。見事なパララック・ビューで人類進化の秘密を教えるのは、クールなヒロセ(16期ライナ700C教室・26期線引ディラック教室・30期半食半哲教室師範代)。サイエンス系の一揆買いをしたようだが、詳細不明。

 

 

耳を澄ませながらよじり、揉み、脳を練る指先の持ち主は女ピラニア・タケシマ(14/20期窯変みさき教室・26期貝感菊理姫教室師範代)。この日はサッショーにならい呼ばれず飛び出て、「このコとこっちのコは相性悪いと思うねん」と抜群の説得力で大活躍。節の目立たない指先は、『デザイン知』のダヴィンチ「洗礼者ヨハネ」の指を思わせる。一揆買いも『情報生命』『資本主義問題』『日本文化の核心』とエディション2+校長著書1冊で決めた。

 

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ピラニアの魂が宿るのは指先だけではないらしい。ときに靴紐に宿ることもある。上のショットは完成したスペースの全景を収めるために脚立を所望したキトー(25期すきま御免状教室・28期倍恩クレオール教室・32期共約ベルハーレン教室・40期ビート秘抄教室師範代)に対し、すかさずシキタ(31期ソーシャロイド教室)が買って出た肩車。

 

中継ではオレンジのハットが目立っていたが、注目すべきはがっちりホールドした指先とともに足元。イタリア製と思しきカラフルなスニーカーの靴紐はあえてベージュ。抱えられているキトーの足元はCAMPERにめずらしく紐の垂れるショートブーツ。この後の校長校話で「装いは足元から」と聞いたピラニアたちがほくそ笑んだのは間違いない。ちなみに二人の一揆買いは、上の人『裸のランチ』ウィリアム・バロウズ、下の人『モーセと一神教』ジークムント・フロイトというが、トーテムの話も出てくるのかしら。

 

 

肩車から生まれた、こだわりの全景ショット。両端の字紋パネルはカットせざるをえなかったが、ドン・キホーテの顔はくっきりわかる?

 

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マスクをとっても噛みつきません、なにわのピラニア軍団。中継に尽力くださったクルー(下段左から二人目令和家・宮本さん、右端SAI・石原さんほか)4人と。働く指に支えられ、肩車に乗って実現した中継。フェアは10月3日まで続きます。

タブロイド写真:編集部

集合写真:井上豊さん提供
その他の写真:木藤良沢


 

※もはや一揆! ピラニア軍団によるMJ梅田店でのプランニング模様はこちら

【このエディションフェアがすごい!36】MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店(大阪市)

祭りというか、もはや一揆です。【このエディションフェアがすごい! 番外】MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 準備篇

 

 

  • 大音美弥子

    編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。