この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

千夜千冊クイズには参った。
前の日に千夜千冊エディションを積み上げて、クイズ対策していたにもかわらず、予想以上のテンポと擬きっぷりにに緊張し、早々に脱落してしまった。
脱落した後もしつこく回答をする。「これは、脳と心の編集学校」。正解したらしたで長女(8)に「なんでさっき、まちがえたの」と容赦ない。
子どもを直接褒めて育てるよりも、家庭の外のすごい人を一緒にリスペクトするスタイルを是としてきたが、やっぱりいいところを見せたかった。ふがいないかあさんと対比して粘る井ノ上シーザーさんの姿が光る。初代クイズ王は学匠の鈴木康代さん。ズームでこれほど拍手したのは初めてだった。手をたたきながら用意と卒意の足りなさを痛感し、明日から読みを変える決意を新たにする。
2日目の校長校話は、イヤホンをして、タブロイドの余白にキーノートしながら聞いた。
最初はナゾトレ本を写して問題を出しにきたりしていたが、「後で」といううちに、動画やマンガ、工作などそれぞれの遊びに散っていく。
ふだんより遅い夕食をとりながら新教室名発表を家族で見る。
ドラムとシンセサイザーの生演奏とともに、日本各地からの新師範代が登壇していく。「あれ、奈良はもうすっかり暗いのに明るい。不思議」と気づいたことをそのまま口に出すと、長男が「もしかしたら石垣島ぐらい?」 はたして石垣島在住の大濱朋子師範代だった。と思えば、オーストラリアからの登壇もある。
「好き」のこもった教室名に沸く
ハイブリッドな感門之盟は、子どもたち世代へのオンラインイベントのモデル、別の「学校」モデルの伝播にもなっていると感じる。私だけではとうてい伝えられない、音楽の「本来」を梅澤光由師範と浅羽登志也冊師が見せてくれる。これも「託す」の一つかもしれない。
全員を「えこひいき」する生演奏
自己は「事件」がないかぎり生まれないという校長校話を反芻する。考えながら、子どもたちに、そういえば開講日にラオス出張が重なった人がいたんだってという話をする。
長男から「ラオスの首都ってどこだったかな」と問いが飛び出す。
ドキリ。思い浮かばない。小学校用と中学校用の社会科の地図帳を取り出し、めいめい開く。「ビエンチャンだ。タイとの国境にすごく近い」。
海に面してないということはわかったが、学校の地図帳にはほとんどラオスの情報が無い。ネットで人口や産業を検索し始める。
「701万人。社会主義国っぽい」
そうえいば、知り合いでラオスに観光旅行した人は、すごくおだかやかないい国だって言ってたけど、政治体制については調べたことなかったと答える。外務省のサイトやウィキペディアを見ると以前は王国で、フランス領だった。第二次世界大戦中は日本軍の進駐もあったようだ。ネット上ではなかなか確かな情報を得にくいということもわかる。
ラオス、石垣島、東京
『新しい地図帳』(東京書籍)より
どんなところにでもお題の芽、「断点」がある。子どもたちにとっては、環境にインタースコアの余地をつくってことが「断然」にしていく第一歩だろうと思う。
途中でなんどか止まっていたが、2日かけて長女の「ばんぐみひょう」も完成していた。
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。