この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

事件から、私は生まれる。
2日間にわたる感門之盟を締めくくったのは、律師八田英子の人生における分岐点だった。
2004年、一介の社会人だった八田のもとに、資生堂の現名誉会長・福原義春氏から著作が届けられたのだ。それは当時上梓されたばかりの『猫と小石とディアギレフ』
福原氏は、のちに『千夜千冊』全集の装幀を手掛ける言わずとしれた重鎮。八田は、たまたま訪れた松岡正剛による「連塾」で福原氏を見知っていたとはいえ、何をお礼してよいのかわからない。何をしても失礼にあたると浮足立った八田は、せめてきれいな字でお礼状を書こうと決め、書道に通いはじめた。数年かかって師範資格を習得。卒業作品を提出した足でむかったのは、忌野清志郎の葬儀だった。あの1冊がなければ、何かが止まったままだったかもしれない。
第77回感門之盟は、忌野清志郎の声に乗せて200名以上もの名前を乗せたエンドロールが流された。清志郎は歌った。「どれだけ遠くまで歩けば大人になれるの」
グランドフィナーレのマイクを託された司会渡辺高志は、声を詰まらせる。「断点を断然点に変えてゆきたい」と松岡の言葉を引き受け、増岡麻子は「ここからがはじまり」と新しい門出を祝す。東京パラリンピックの閉会とともに、イシスはDAN ZENへ向け飛び出した。
※77感門 関連まとめはこちら
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。