この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

43[破]の合同汁講の時の話である。まだ本楼で汁講が出来ていた頃の話だ。
なぜかその場に、まったく関係のない師範代が来ていた。学衆からすると「あなた、誰?」という話である。聞くと、前日、自分たちの汁講があったという。
「みなさんの汁講に興味があったので、つい」
そんな理由だけで、普通、他の教室の汁講に足を運ばない。
自分の「数奇」に正直で、少しでも興味があれば未知に踏み出すことを微塵も恐れない。労も苦にしない。誰に何と思われようが構わない。まず体を動かしてみる。フラメンコだって踊ってしまう。 14季[離]を退院した直後に、師範代や錬成師範の経験者ながら、今期、47[守]を再受講して卒門。こんなことを平然とやってのけるのも納得だ。
誰であろう、本日の司会者、嶋本昌子さんその人である。
実はジャイアンは、33花伝所で錬成師範としてお世話になっている。愛情たっぷりの指導に、何度泣いたことか。嶋本錬成師範の指導は、喩えるなら「ハグ」だ。ギュッと抱きつかれるので、その幸福感に油断すると窒息するのだが……。
ジャイアンが嶋本錬成師範から学んだことは、その回答を好きになること、学衆を愛することだった。
今の時代、他者を愛することはムズカシイ。ところが嶋本さんは平然とそれをやってのける。なぜできるのか。ずっと疑問だったのだが、今日の司会ぶりでようやく得心した。
「すっかりファンになってしまいました」
この言葉が何度飛び出したことか。隣にいる司会者(至宝)から、「またファンになってしまったんですね」と皮肉を言われても動じない。なぜなら惚れることこそ、嶋本さんのダンゼンだからだ。嶋本さんはその人の「ダンゼン」を瞬時に見つけて、すぐに好きになる。心底、惚れる。きっとこのあと、誰かのために涙するのだろう。
ああ、「全部」を愛する必要はなかったんだ。「部分」を抱きしめればいいんだ。
指南とはこういうことなのか。
嶋本昌子さんの司会から、あらためて指南の基礎を教わった。
……ところで嶋本さん、またハグしてもらえませんか?
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。