年表上で演出を 情報の歴史プロジェクトMTG

2019/10/11(金)14:01
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 編集工学研究所では、一部の関係者以外には極秘裏に進められているプロジェクトがある。「情報の歴史プロジェクト」もその一つ。松岡正剛校長が監修し、あらゆる情報文化史を同時年表化した書籍『情報の歴史』(NTT出版、1996年)の歴象アップデートと出版を目的としている。政治や宗教、宇宙、IT、美術、サブカルなどのジャンルを網羅するために、その道の”目利き”は欠かせない。

 

 10月10日のプロジェクトミーティングに招いたのは、米川青馬師範。編集ライターであり、多読ジムのプログラム開発メンバーであり、舞台芸術への慧眼の持ち主だ。

 

 演劇にスポットを当て、キーとなる劇団・演出家・劇場を中心に1990年代から2010年代を概観した。「平田オリザの功績」「SPAC『マハーバーラタ』のアビニョン演劇祭招聘」「チェルフィッチュの『三月の5日間』」を三大歴象ととらえつつ、「最近は(演劇の潮流を)一口に語れなくなってきている」と米川師範は語る。

 

 『情報の歴史』には、以下の一節がある。

 

  情報の歴史にはじつにさまざまな表情がある。

  空間と時間の歴史,認識と表現の歴史,

  戦争と生活の歴史,経済と技術の歴史,機械と医療の歴史,

  繁栄と失望の歴史,子供と老人の歴史,強熱と熟慮の歴史,

  大衆と個性の歴史,

  それらは,あらゆるコミュニケーションの歴史であって,

  またメディアのすべての歴史だった。

 

 あらゆる歴象は相互に影響している。ペアにすることでうまれる表情がある。3.11といった出来事やテクノロジーの発展による演劇の変化も見逃せない。

 

 そこで次回のミーティングでは、年表上で他ジャンルと照合させることによって演劇界の30年を総括することとし、お開きとなった。『情報の歴史』刊行の杮落としに向け、まだまだ稽古は続く。

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。