この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

開講から2年目を迎える多読ジム。
「本を何となく読み進めてしまう」「文系(あるいは理系)の本が読めない」。
そんな読書癖の襟元を見直しながら、ジムに集う読衆たちは今日も本から本を伝い歩く。
多読ジムは継続型のトレーニングだ。年4回、冬春夏秋ごとに3か月のスパンで開催される。現在はseason05冬が佳境を迎えている。ジムの読衆は冊師から出されるお題に向き合ううち、気づけば多数の未読本や積読本を手にし、マーキングに集中する。
season01から継続受講メンバーも多数在籍する。
「同じお題への回答を繰り返して意味があるの?」と疑問に思われるかもしれないが、1節、1キーワードごとの「読み書き」が次の本を手に取るきっかけになる。少しずつ読書量が増え、その実感が嬉しくてまた別の本に手が伸びる。
ここでジムを継続している、読衆の声をお届けしたい。
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高宮光江さん(season05スタジオ茶々々)京都在住、season02から参加
【知覚×全身、読書尽くしの3カ月】
受講のきっかけは、編集学校の吉村堅樹林頭から「多読ジム」が開講することを教えてもらったため。帝京大学の共読ナビゲーターを経験した時に、まったく同じ本なのに学生によって読みが違う、その気付きが多様である面白さを感じた。ウェブに関わる仕事の反動からか、自分自身も同じ本を読みながら違う視点を楽しめる「共読体験」をしてみたいと思ったという。
多読ジムでトレーニングしていると、読むスピードは確実に速くなります。従来は速読とはいえ、字面を追うだけで読み落としがあったのですが、
マーキングすることで、本の頁に自分の感情という楔を打ち込むようで、読み返した時に、あの瞬間の記憶が立ち上がってくる感じです。
一度読み通した後にマーキングに更に追加していく過程も、本全体、さらには他の類書との繋がりが発見できます。
未踏のジャンルへのチャレンジから自分の読書畑が広がり、以前読んだ本も再読で全く違う貌を見せてくれたりする体験から、自分の脳内の癖に気づくことができます。多彩な人の共読を通じて多面的な視野でものが見られます。
多読ジムで鍛える身体、まさに全身で読書!しています。
【エディション読み回答より、高宮さんの図解紹介】
千夜千冊エディション『理科の教室』のチームを分けてみました。表紙に合わせて水色の色鉛筆にしました。追伸によるワードは赤にしました。
理科、そして科学の専門分野ごとに大きく分けてみました。基本章立てに従っていきます。
第1章は個性的なへんなおじさんを大集合させました。女性の足フェチと「ガ、ガッ、ガモフ、ガーモフ万歳!」と行進する靴音のイメージから両足に配しました。
第2章は中央を縦断します。下へ鉱物、上へ樹木が伸びていきます。
第3章は生物が多いので「〇〇の惑星」のフレーズから地球に見立て、ダ・ヴィンチもどきにと地球が一体化した図にしました。右脇はゾウの耳、左脇は虫の翅を配します。あらゆる生き物たちを時代や愛着から並べました。ペンギンもメダカも飛びます。
第4章は人体を貫き、またヒトの惑星とし人体て全体を包むテーマもあるのでやや分散しました。最後の2冊はこれからを考えるための課題本となりそうとピンクでマークしました。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
【増岡麻子冊師からのメッセージ】
新型コロナの第二波に揺れた2020年夏。season03スタジオこんれんで共読を交わした高宮さん。「自分を透き通す稽古」と称した通り、真っすぐな本との交際が毎晩のトレーニングで輝き続けていました。課題本から数寄のフィルターをどんどん切り替えてゆき、絵本に始まり、白州正子、五木寛之、レイチェル・カーソンまで読書を広めてくれる。汗をかき続けた猛暑のなか、知覚と身体を連ねて共読を推してくれました。
『理科の教室』の表紙からインスパイアされた図解が見事でした。
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多読ジム season06 春は2021年4月12日(月)スタートです。
申込締め切り3月31日(水) 申込はこちらから
https://es.isis.ne.jp/gym
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音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。