もう1冊の「紫の火花」【75感門 京都】

2021/03/14(日)21:26
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 笑顔の三谷は一瞬驚いた顔をし、同様に驚いた顔をしている46[守]番匠の景山和浩と目を合わせた。スクリーンビューでは 46[守]の先達文庫が発表されている。かりぐらジョジョ教室師範代の三谷和弘が受け取った本は岡潔『紫の火花』だった。

 

 なぜ2人は驚いたのか。京都会場のテーブルにはもう1冊『紫の火花』が置かれていたのだ。

 

 「Inform 共読区」のテーマに合わせた会場のディスプレイとして、三谷が自ら持ち込んだ3冊のうちの1冊だ。

 

 先達文庫を予見していたかのような三谷。「なぜ、この本を持ってきたの?」。景山の問いに、「岡潔が好きで、京都っぽいので」と答えた。決して情報が漏洩していたわけではない。京都から連想を広げた三谷が選んだ1冊が岡潔なのだ。偶然では片づけられない一致は、三谷への何よりのエールとなった。

 

 最高の思い出ができた三谷だが、気にしていた言葉がひとつあった。感門表授与スピーチに松岡校長からの入ったツッコミだ。「カルシウムが足りてないんじゃないの」。

三谷師範代が持つ2冊の『紫の火花』

  • 景山和浩

    編集的先達:井上ひさし。日刊スポーツ記者。用意と卒意、機をみた絶妙の助言、安定した活動は師範の師範として手本になっている。その柔和な性格から決して怒らない師範とも言われる。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。