この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

いきなり始まった45[破]「ハイパープランINFORM」プランニング編集術アワード予選。第75回感門之盟 INFORM共読区「P1グランプリ」本戦出場をめざし、師範が援軍となって応援編集を繰り広げる。あなたの琴線に響くのはどのプランだろうか?
遊刊エディストでは「千悩千冊」が人気だ。「あなたにはこれでっせ」と自分の悩みに応じた本を紹介してもらえる。人生相談に夢占い、業務照査に健康診断……、私たちは来し方の意味を読み、行く末を考えたい生き物なのだ。
草の匂いに落ち着いたり、プラスチックの手触りにざわついたり、感覚器官がある刺激を感受したとき、生物として根源的な感覚を共有することもあれば、一個人として他者とは違う感覚をもよおすこともある。自分はどんな感覚の癖を持っているのか。“Go感測ラボ”は、そんな疑問に「あなたはこうでっせ」と答えてくれるミュージアムだ。肌の奥の来し方なんて知らないでおきたい気もするが、知ると行く末が変わる気もする。
占いとはちがってすこぶる科学的だ。様々な場面のアトラクションやクイズへのリアクションは、手首に巻いた「Feel Trucker」に刺激と反応の型として集積される。データを操作して刺激の種類や度合いを変え、希望のシーンにあわせて身体がどのような感じを覚えるとパフォーマンスが上がったり下がったりするのかを調整・分析するプログラムを組むことができる。偶然まとった気分や感触や体感の機微を、自分の必然のモードとして捉え直すことができるのだ。
そして健康診断とはちがってなかなか編集的だ。要素還元的な手法に終始しない。最終展示室「感覚曼陀羅」では、来館者のデータを総合し、いくつもの超・ダイアグラムに再編集される。例えばジェンダーや年齢、地域性など無数の軸による刺激と反応の関係のマッピングは、属性と感覚志向に対するステレオタイプな世間の思い込みから解放する。年配の男性がピンクにときめいてもいいし、少女が墨の香りにとろけてもいい。
ミュージアムの輪郭が見えてきたとき、プランナー志賀さんは予測した。「感覚の研究が心身の状態にアプローチできることが一般的になった時、ツールや施設、アイテムはどういうものが増えるだろう。それによって生活がどう変わるだろう」。以下にざっとサマリーしてみる。
未来その1)
「Feel Trucker」が実用化すると、まずアスリートが、続いてビジネスパーソンや受験生が心身をコントロールする武器にするだろう。特定の感覚野に適切な刺激の度合いが把握できるので介護業界でも活用されるはずだ。ユーザーの協力で、集積データはラボのさらなる研究に貢献するだろう。
未来その2)
ジェンダーや年齢、体形や趣味嗜好のような既存の分類軸以外に、どの感覚野が優位か、どういう感覚の癖を持つタイプかという、新たなカテゴリーが生まれるだろう。そのモデリングをいかして、学習方法のカテゴライズや組織内の適職を勘案する考えが普及する。
未来その3)
エンターテイメントも芸術も、現在は視覚・聴覚が中心だが、感覚意識が進むと、嗅覚、触覚を活用した作品が多くうまれ、愛好する人が増えるだろう。感覚刺激別のリラクゼーション施設や遊興施設がうまれ、ジムなどで感覚を鍛えるムーブメントが起きる。嗅覚や触覚を活用した新しいゲームがうまれ、世界大会が催されるだろう。
志賀さんのIF&THEN推論は、次々にGo感測ラボがある社会を描いた。この思考の伸びがプラン起爆のポイントだったと宮原師範代は振り返る。
正直なところ、あまり完璧に感覚がコントロールされる日が来るのは恐ろしい。私には、お茶で一息つくように、ミュージアムショップでカスタマイズされたマイ感覚グッズでくつろぐぐらいがちょうどいい。しかし、人は感覚や気分に翻弄される弱い存在だ。このミュージアムの研究成果は、やがて薬物依存や自殺の防止にも役立つにちがいない。
ミュージアムのネーミングを捻る志賀さんのもとに、ふらりとやってきた堀口さんが、マドンナの「レイン」の動画を置いていった。
~♪Rain, feel it on my finger tips Here it my window♪~
すると「感数転館」が「Go感測ラボ」になった。五感の捉えるものはまだまだ底知れない。
Madonna – Rain
https://www.youtube.com/watch?v=15kWlTrpt5k
▼投票はこちら
・投票締め切り:2021年3月6日(土)午前9時
→ 8)柔走柔断教室/Go感測ラボ <<<
わたしのミカタが視える、みつかる、力になる
~五感に贈る新しいエンパワメントの形~
野嶋真帆
編集的先達:チャールズ・S・パース。浪花のノンビリストな雰囲気の奥に、鬼気迫る方法と構えをもつISISの「図解の女王」。離の右筆、師範として講座の突端を切り開いてきた。野嶋の手がゆらゆらし出すと、アナロジー編集回路が全開になった合図。
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2002年の大阪。上方伝法塾の塾長、はじめてのナマ松岡正剛は超高速だった。西鶴や蒹葭堂、山片蟠桃らを織り込んで関西経済文化を濃密に説いたかと思うと、目の色を変えて灰皿のもとに行き煙にまみれる。とても近寄れる空気ではない […]
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。