この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

こんにちもおめでとうございます。本日(1/6)は知る人ぞ知るシド・バレットの誕生日。本の世界から幸せと出会いを運ぶサッショーこと大音が、おみくじ本第三弾をお届けします。
三人目のおみくじ本祈願者は【スタジオだんだん】の<リトクリ>さん。リトクリはLITTLE CREATURESというイカ天出身のバンドで、2021年1月に、5年ぶりの新アルバムを出すとのこと。2020年を託した本は『野鴨』イプセン/岩波文庫+『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』チェーホフ/光文社古典新訳文庫でした。
ドイツ文学からロシア文学へ、舞台から舞踏へフィールドを広げるリトクリさんの2021年の抱負は:
鍵が鍵穴に次々に差し込まれていくような年にしたいです。2、3年後に、僕は生活を変えるのではないかという予感があります。具体的にはまだ見えませんが、現状の仕事を多少は減らし、読書を増やしていくのは確実に思えます。来年は、変化の基盤を築く年、転がるほうに物事が転がっていく年にしたい、というか、なるだろうと思っています。直感を研ぎ澄まして選択していきたいです。
転がりましょうよ。ガラガラ・ガンガンガン!
ま・ま・まさかの大吉3連ちゃん。福禄寿の杖が振られたようです、村のドン・キホーテが見送ってます。
『ふり人間 演劇の境界』石井達朗/小学館
石井達朗さんも千夜千冊では『異装のセクシャリティ』が取り上げられた舞踊評論家。リトクリさんならよくご存じかもしれませんが、本書は石井氏がニューヨークにいた頃に書かれたパフォーマンス論の原点です。
冒頭は東武練馬駅ホームから「田遊び」の痕跡を幻視する場面に始まり、「ふり」がシャーマニズムから神事芸能や伝統芸能を経て演劇・舞踊・音楽・美術に発展していった経緯、それが日常生活の自己表現や非言語的コミュニケーションでもあれば、スポーツやゲームにもなり、政治・社会・経済・宗教行為ともみなされることを幅広く研究された成果。アメノウズメとサンスクリット演劇、そしてジョン・ケージがまぜまぜに語られるのが魅力です。こちらが転がる方角だろう、と僭越ながら。
<リトクリ>さんからエディストの皆さんへの伝言は:
…運勢:大(きなターンが)吉
(本書からのお言葉)
「詩人の言葉は、咲かないハスの花である。役者がそれを咲かせる」と『ナーティア・シャーストラ』は語る。
(注)
『外地の三人姉妹』は多田淳之介演出、東京デスロック×KAAT@神奈川芸術劇場にて上演。原作はチェーホフ、翻案・脚本はソン・ギウン。3姉妹は朝鮮半島に駐屯する日本軍の亡くなった将校の娘たちとして東京へ望郷の想いを募らせていたというお芝居。Freakout!
☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡
大音美弥子
編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。
「情報はひとりでいられない」。[守]入門のしょっぱなで出会ったことばが何度も胸に去来した。花と歌を楼主<泣き虫セイゴオ>に捧げようという願いに始まった5月11日のISIS FESTA【花歌果の戒】。参加者はたくさんのセイ […]
【参加者募集】2025母の日は、編集の父セイゴオを偲ぶ「花歌果の戒(かかかのかい)」へ、本楼へ
生と死はいつも背中合わせの裏おもて。背後の死を通じて目前の生をゆたかにする【終活読書★四門堂】(多読アレゴリア)より、特別イベントのお知らせです。 5月第二日曜の11日午後、豪徳寺赤堤のISIS館本楼に […]
【多読アレゴリア:終活読書★四門堂】春の門は花と詩がいっぱい!
四つのシをめぐって、あれやこれやとアレゴリア、「終活読書★四門堂」も<冬:私>の季節はそろそろ大団円。バトンタッチに向けてスタンバイOKの<春:詩>担当の塚田堂守より、お誘いメッセージをお届けします。 […]
去ること、多読ジムseason19では「三冊筋プレス◎アワード」が開催されました。お題は「古典に親しむ三冊」。今回は古典にちなんで「八犬伝」仕立ての講評です。どうぞお楽しみに。 千夜千冊エディションvol […]
【MEditLab×多読ジム】欲張りなドクトルになるには(大音美弥子)
多読ジム出版社コラボ企画第四弾は、小倉加奈子析匠が主催するMEditLab(順天堂大学STEAM教育研究会)! お題のテーマは「お医者さんに読ませたい三冊」。MEdit Labが編集工学研究所とともに開発したSTEAM教 […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。