この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

御神木を見上げるように、本棚を見上げる参加者たち。にじり口で佐々木千佳局長と吉井優子師範はぬかりなく名札を手渡す。
お茶出しの林朝恵番匠はカウンターと座席を小走りで行ったり来たり。ナビゲーターの米田奈穂師範代は提灯の下で参加者を出迎える。8月10日(土)、本楼でエディットツアーが開かれた。
大学で図書館職員をしている米田にとって、本に囲まれた空間はホームに近いはずだが、この日はドキドキが止まらなかった。
それもそのはず、自身が師範代を務めた42[守]あやつり近江教室の学衆が夫と小学4年生の娘キキちゃんを連れて参加していたからだ。「責任重大です」と意気込んだ米田は、吉村堅樹林頭からリハーサルで笑顔の特訓まで受けた。
いざスタートすると緊張はどこ吹く風。自身の数寄である「文楽」を生かした編集語りはやわらかくかつ、なめらか。「日本にないもの」をテーマにした編集思考素と本を使ったワークでは、参加者の心を見事にあやつった。
大人たちは「難しい、でも他の人の発想を聞くのは刺激的」と高揚。キキちゃんはスキップするように本選びに走った。
ツアー終了後、多くの参加者が名残惜しそうにその場にとどまり、イシス編集学校に興味を示した。最後まで残ったキキちゃんは「帰りたくない、明日も来る」と椅子から動かぬ程だった。
皆が去った本楼で、米田はホッとした表情でソファに腰掛け、テーブルコーチの吉井や林とツアーを振り返る。が、それもつかの間、林頭と9月のツアー打ち合わせが始まった。ゆるんだ糸は、またピンと張る。
林朝恵
編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。