「編集工学」を世に伝える最新作『才能をひらく編集工学』刊行!!

2020/09/15(火)21:00
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「才能」は「編集」でひらかれる。編集の可能性を一手に引き受けた書籍、『才能をひらく編集工学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が2020年8月30日に刊行された。

 

この世界の営みのすべては「編集」によって見ることができ、ふだんは意識していない情報のインプットとアウトプットのあいだで動いているのもまた「編集」である。誰の中にも眠っている「才能」を「編集」によって目覚めさせ、個人や集団の潜在力を惜しみなく開放する方法として、編集工学のエッセンスがぎゅっと詰め込まれた一冊だ。

 

著者は安藤昭子。第6季「離」世界読書奥義伝を典離で退院し、現在は編集工学研究所の専務取締役として事業全般を統括する。松岡正剛校長に「安藤さんにあずけておきさえすれば、どんな仕事もどんどん進む才能の持ち主」と言わせる編集工学の担い手の一人だ。編集工学研究所の活動を本にすべきだという周囲の声に後押しされて、松岡校長のアドバイスのもと、本著を書き上げた。

 

著者の安藤昭子

 

今年、2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響で世の中が大きく変わった。混迷の時代だからこそ、押し寄せる変化の波に対応する力として「編集力」に注目が集まっている。世の中の編集への関心の高さは、Amazonランキング「出版マスメディア」の売れ筋ランキングで『才能をひらく編集工学』が1位を獲得したことにも表れた。(2020年9月15日時点)

 

編集でひらこうという才能は、ひとりひとりの中に、その人ならではの力としてそなわっているものだ。「才」とは古くは石材や木材に宿っている力のことをいい、それを引き出す技や業が「能」であるとされていた。才能は、引き出す側と引き出される側の相互作用の中に現れるのだ。

 

石や木のように、人間の内側にはその人だけの「才」があり、それを引き出すのは自分自身の「能」、編集力だ。引き出された「才」は、まわりに触発されながら新たな可能性に向かう。編集力は、「才」を引き出すだけでなく、「才」を生き生きさせる力もあるのだ。

 

 

押し寄せてくる変化を味方につけて、編集的自由に向かうための編集力を高めるメソッドが『才能をひらく編集工学』では惜しみなく公開されている。第3章にある10の実践メソッドを紹介しよう。

 

【才能をひらく「編集思考」10のメソッド】

1.思考のクセに気づく アテンションとフィルター
2.情報の周辺を照らす 連想ネットワーク
3.見方をガラリと変える情報の「地と図」
4.たとえ話で突破する アナロジカル・コミュニケーション
5.新たな切り口で分類する 軸の持ち込み
6.組み合わせて意味をつくる三点思考の型
7.原型から価値を見出す アーキタイプ連想
8.優れたモデルを借りてくる 見立ての技法
9.好奇心を触発する 開け伏せ具合
10.物語の型を使う ヒーローズ・ジャーニー

 

世界の見方を変え、松岡正剛の方法知を習得するための思考法が並ぶ。『才能をひらく編集工学』では、当たり前に見えている世界を捉えなおすための技法や世界観を演習も交えて記されている。『知の編集工学』『知の編集術』(いずれも松岡正剛著)の刊行から20年。そしてイシス編集学校開校20年目の今、『才能をひらく編集工学』は編集工学啓蒙の最新作として誕生したのだ。

 

 

「一冊書いてみて改めて思ったことは、やっぱり“編集”こそが全てのおおもとであり源なのだ、ということでした」。

安藤が語る。「世の中にあるものすべては情報です。情報である以上、どんなややこしいことだって編集できる。編集を学んだ私たちは最後の砦となるその方法を知っているんです」。この混乱の時代に編集力を携えて、わたしたちはそれぞれの場所で自ら変化をおこす人になれたらいい、と未来を見据える安藤の目は、強く確信に満ちていた。

 

著者の願いが込められた『才能をひらく編集工学』だが、編集にはじめて触れた人にも親しみやすい一冊になっている。もちろん、編集を学んできた人にとっては、安藤による編集工学の言いかえを元に自分の理解を深める手摺になる。願わくばもう一度、この本とともに世界読書奥義を旅してみたい、そう思う人も少なくないだろう。

編集を学ぶものが『才能をひらく編集工学』を手にしない理由はない。松岡校長が30年来積み上げてきた方法知や編集工学の世界観を次の時代に継ぐ本著を手元に、さらなる編集力の高みに向かってほしい。

 

 

『才能をひらく編集工学 世界の見方を変える10の思考法 』安藤昭子著
(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020/8/28) -Amazon

  • 衣笠純子

    編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。