この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

頼まれれば二つ返事で引き受ける。[守]の師範・番匠を歴任したことからもそのことは分かる。遊刊エディストのスターDust記者である井ノ上シーザーは実は侠の男なのである。
45[守]の師範代が体調を崩ししばらく休むことを余儀なくされた。師範代が帰って来るまでの代行指南を快く買って出たのが井ノ上だ。その事前打ち合わせが2020年6月24日オンラインで行われた。Skypeに顔をそろえたのは学匠の鈴木康代、担当師範の石井梨香、番匠の景山和浩、そして井ノ上の4人だ。
鈴木が口火を切る。「井ノ上さんにはミメロギアの番選ボードレールから、用法3のラストを目途に指南をお願いします」。用法3後半とは「即答ミメロギア」「ルール・ロール・ツール」「ダンドリ・ダントツ」「レシピを真似る」「犬と女とカッティング」。[守]でも大物と呼ばれるお題が並ぶ。用法3の総まとめであり、用法4への橋渡しとなる稽古の山場だ。しかも番選ボードレール。学衆との濃密な応酬がいきなり求められるのだ。やはり百戦錬磨の井ノ上が適任である。
「難しいところですね。いや、やりますけどね」。井ノ上は38守「熱線シーザー教室」で伝説的とも言える教室運営を見せた。「回答は師範代への上納金」と言ってはばからず、学衆を煽って稽古熱を上げ続けた。しかし、それも開講から積み重ねた学衆とのコミュニケーションがあってのもの。2カ月が過ぎた教室に突然入って井ノ上シーザー流指南が通用するのか不安なのだろうか。それとももったいをつけているのか。「出題はわたしがやりますから」。石井も全面的なサポートを約束する。
ふと、鈴木が「先達文庫がもらえるかも」と振ると、井ノ上の顔に急に赤みが差した。「それはやる気が出ますね。校長から本がもらえるほどうれしいことはないですから」。話が急にスムーズに進み始めた。
「このことは校長にぜひ伝えておいてください」「薄い本でかまいません」「校長のサインさえ入っていればメッセージはなくても」。侠の男、井ノ上は強欲だった。とどまらないリクエストの声を聞きながら3人は早々に退出ボタンをクリックしていた。
井ノ上が代行指南を始めてすぐ、教室をのぞいてみた。「みなさん、ゴジラが口から吐く放射能を思わせるような回答をお待ちしております!」。熱線を求めるアドバイス。シーザー節は健在だった。
景山和浩
編集的先達:井上ひさし。日刊スポーツ記者。用意と卒意、機をみた絶妙の助言、安定した活動は師範の師範として手本になっている。その柔和な性格から決して怒らない師範とも言われる。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。