エディション読みが描く『それでも、読書をやめない理由』

2020/07/17(金)10:58
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 <多読ジム>Season03が夏の扉を開ける、その2週間前。

 

 2020年6月28日(日)24:00、Season02は終わりの時を迎えた。

 

 100人を超える読衆のトレーニングは各々の読筋をふるわせ、爽快感と未練、汗と涙のしずくを残す。

 <多読ジム>のお題のひとつ、「エディション読み」では『千夜千冊エディション』のリコメンド文づくりが行われる。

 いわゆるブックイベントなどの推薦本につけられるリコメンド文は、相手や自分のシチュエーションが主役になるか、あるいは本の要約に留まり、著者と内容、そして自分との関わりが響いてこないものが多い。読書を自分ごとにするのではなく、一般論に留まりがちだ。

 しかし、<多読ジム>ではアナザーセルフ、すなわちその本の「読前」の自分に向けて、千夜千冊のエッセンスを贈るつもりでリコメンド文に取り組む。著者や松岡正剛のイメージも加えながら、自分の心に刺さったフレーズを随所に取り入れていくのだ。

スタジオこんれんSeason02の読衆であり、編集学校では編集レクチャーの名手として活躍中の、寺田充宏師範による『千夜千冊エディション 本から本へ』よりリコメンド文を、図と共に紹介する。


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<リコメンド文>

 本には何でも入ることはとっくの昔に教えてもらった。だが校長の読書には遠く及ばない。そこで本書だ。読むことと書くことを行き来する方法がハイパーリンクして全頁に横溢している。

 いずれも多様である。『正法眼蔵』の禅観75項目を一気に同時現成させ、A~Lまでの多重のポオを呼び込んだかと思えば、エーコとブラッドベリを突き抜けて『それでも、読書もやめない理由』が実感できる。
 読書と編集は社会の情報編集に対する抵抗なのである。

 本と交際するには文字をなぞるだけではおぼつかない。カラザースに中世の読書術を学ぶべきで、アフォーダンスが出入りする体ごとのエクササイズにしなければならない。

 

 千夜千冊の勝手と自分勝手を重ねて読んで、書いて、また読め。

 

 

<寺田師範による図解>

 


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 『本から本へ』に収録されている『正法眼蔵』『記憶術と書物』『薔薇の名前』『華氏451度』。
 世界読書の奥義から、書架の森を抜け、一通りでない読み方の指南を受け、ビブリオゲームに遊ぶ。宗教、文学、教育をテーマにした本が過去から未来へ連綿と渡る。

 

 読書は1冊読んだら仕舞いではない。本から本をつたって自分と著者、あるいは松岡、そしてスタジオの仲間の記憶と情報を繋ぎ合わせる。ある1冊が別の1冊を掴もうとする、その力が“読書をやめない理由”をもたらすのだ。

 <多読ジム>では読書がハイパーテクストであることを誰もが体感できる。
 寺田師範は本と自分だけでなく、読み方も能動的になることを伝えた。

 

●多読ジムseason03夏 開講中

 

●エディットツアー
イシス編集学校の師範・師範代によるレクチャーを通じて、ユニークな編集ワークが体験できる。春に続いて、今夏もオンラインツアーを開催予定

  • 増岡麻子

    編集的先達:野沢尚。リビングデザインセンターOZONEでは展示に、情報工場では書評に編集力を活かす。趣味はぬか漬け。野望は菊地成孔を本楼DJに呼ぶ。惚れっぽく意固地なサーチスト。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。